子どもに読ませたい漫画の感想、レビュー

3人の子を持つ漫画好きの父親が、これまでの読んだ1万冊以上の漫画の中から子どもに読ませたい漫画を紹介します。

赤ちゃん用の本が絵本から始まるように、文字だけでなく絵でも情報を伝えてくれる漫画は子どもが情報を吸収するためにはとても便利な媒体です。子どもに読ませたい(読ませたくないと思ったものも含め)漫画を感想・レビューとともに紹介します。
漫画の簡易評価をカテゴリとして整理していますので、お勧め漫画から見たい方はカテゴリもご参照ください。

  • お勧め度: ☆☆☆(人生に命に)
  • 対象年齢: 10歳以上(小学生でも十分楽しめます)
  • 初発表年: 2011年
銀の匙

ストーリー

寮があるという理由で大蝦夷農業高校(エゾノー)に入学した八軒勇吾は、悪戦苦闘の日々をおくりながら賢明に悩んで考える。八軒にとっては何もかもが初体験だけど、仲間も楽しみも増えた高校生活。しかし時折、農業の厳しい現実にもぶつかる…
 進路を考える時期になり、八軒は思い切って起業することを決意。「人の夢を否定しない人になりたい。」そんな思いから「絆の農業ビジネスプロジェクト」を立ち上げ、手探りでひとつひとつ実行してみる… そんな農業高校生・八軒と仲間たちの、汗と涙と泥まみれの酪農青春グラフィティ!!

農業高校を舞台とした主人公の成長物語

「銀の匙」では、北の大地の農業高校の日常と高校生たちの成長が描かれています。夢を明確に持ち、将来を見越して一日一日を過ごす高校生たちと、夢を描けずに苦悩する主人公。離農により夢をあきらめざるを得ない仲間。

仲間たちと農業という、衣食住に根ざした人が生きるうえでの根源ともなる産業を学ぶ中で、その厳しい現実を知り、やりたいことを見つけ、主人公が成長していきます。

農業高校への偏見が無くなる

「銀の匙」を読むまでは農業高校の中の生活なんて考えたこともありませんでしたし、農業高校なんて偏差値的に普通高校へ行けない農家の跡取りが通う学校だという偏見すら持っていました。

主人公の八軒勇吾は受験戦争に敗れたというか、受験戦争から逃げ出して農業高校を選びました。八軒自身にも僕が抱いていたと同じような偏見があったんじゃないでしょうか。

でも、八軒は農業高校でそうではないことを知ります。

農業自体、個人事業主として経営感覚を持って取り組まなくてはいけない事業ということもあり、農業高校の仲間たちは自分の家の農場の経営や将来のことを真剣に考えていました。机に向かって頭だけを働かせてきた八軒にとって、頭と同時に体も動かす農業という産業そのものも大きなカルチャーギャップだったのでしょう。

自分が農業高校にいたら、八軒と同じような戸惑いを感じ、似たような行動を取ってしまうだろうと共感を感じます。高校生だった自分よりも、すっと大人で、先を考えている農家出身のクラスメイトたちからは学ぶことが沢山です。

と畜場

食や命の大切さ

農業高校を舞台にしていることもあり、食や命についても大変考えさせられます。普段、当たり前のように食べている肉や卵で、消費者としての目線だけでは命の消費にまで気づきにくいのですが、八軒は農業高校で自分で育てた豚を加工して食べることになります。

農業高校では日常なんでしょうが、消費者と生産者って、やっぱり見えてくるものが違いますね。命の大切さや食への感謝を感じます。

実体験もしてほしいけれど

実体験と追体験とでは体験の質に違いはあるのでしょうが、追体験であっても、まったく体験しない場合とは雲泥の差があります。僕の子どもたちが将来について考える際に、食や命について考える際に、参考にして何度も目を通してほしい漫画です。


  • お勧め度: ☆☆(はまる人ははまる)
  • 対象年齢: 10歳以上(子ども心もくすぐる)
  • 初発表年: 2006年
聖☆おにいさん

あらすじ

目覚めた人ブッダ、神の子イエス。世紀末を無事に越えた二人は、東京・立川でアパートをシェアし、下界でバカンスを過ごしていた。近所のおばあちゃんのように、細かいお金を気にするブッダ。衝動買いが多いイエス。そんな“最聖”コンビの立川デイズ。

日常系コメディ

宗教、政治、野球の話はタブーだといわれますが、「聖☆おにいさん」は、そのうちの宗教をネタにしています。仏教の祖ブッダとキリスト教の神の子イエスが現代日本での生活を満喫するコメディ漫画です。別世界のトリップものでありがちな、彼我の常識の違いをネタにすることが多く、読んだとたんに大爆笑というよりは、じわじわ効いてきてクスリと笑えるような漫画です。

断食

大丈夫ですかね

ブッダの苦行とか弟子の奇行とか、欲にまみれたイエスの素行とか天子たちの曲行とか…。宗教を馬鹿にしているような面が多々あります。

ブッダは肉体的精神的苦痛を喜ぶマゾヒスティックな人物ですし、イエスは軌跡の力を持った天然ボケのお子様キャラです。まじめに信じている人たち、特に原理主義的な人には許せない世界観ではないでしょうか。よく言えば宗教に肝要な日本だからこそネタにできる漫画ですが、作者が狂信的な人に殺されてしまわないか、心配になるような作風です。

まぁ、でも、過激すぎずおとなしすぎない、絶妙なラインのコメディだとも思います。

元ネタを知っているといっそう面白い

「聖☆おにいさん」の中でも多少の説明はあるものの、仏教やキリスト教、神道といった宗教の基礎知識や日本で行われている年中行事に関する習俗の知識があると、よりいっそう楽しめる漫画です。

ブッダの耳や螺髪といった異形の話や、悟りを得るまでの苦行、父やモーセなどの聖書の物語等、教養としても押さえておきたい話でもあります。実際、うちの子は、「聖☆おにいさん」をきっかけに、天使と悪魔の事典に手を出してみたり、ブッダに手を伸ばしたりと、興味を盛ってくれたようです。世界に目を向けると、宗教に関する教養は必須ですので、そういった世界に興味を持つための入り口にもよいかもしれません。


  • お勧め度: ☆☆☆(面白い!)
  • 対象年齢: 10歳以上(直接表現はありませんが、性的要素を匂わせることがあります)
  • 初発表年: 2012年
アシガール

ストーリー

速川 唯は、遅刻・忘れ物・居眠りの常習犯で、恋愛にもオシャレにも関心がないぐうたら女子高生。なんの目標もなくなんとなく過ごしていたある日、弟の尊がつくったタイムマシンをうっかり起動させてしまい、戦国の世へ…!?

足軽×ガール

「アシガール」は戦国時代にタイムスリップした女子高生が、タイムスリップした先の若殿様に一目惚れ。足軽となって若様の警護をしつつ、身分違いの愛を育んでいく(?)コメディです。

身分違いの恋という少女マンガにありがちなストーリーでありつつも、タイムスリップを絡めるあたりが特徴のラブコメでしょうか。でも、ラブコメと言っても、三角関係やすれ違いといった要素はほとんどなく、恋愛よりもコメディが前面に出ています。そういう意味で、僕のような少女マンガはちょっと苦手な人にもとっつきやすい漫画です。

タイムスリップはよくあれど

信長のシェフなど、タイムスリップものの漫画は数多くあります。

コメディタッチの「アシガール」は信長協奏曲に近いでしょうか。お馬鹿な高校生がタイムスリップしてその先で活躍する点も似ているかもしれません。でも、実在の武将や史実とは関係なく舞台として戦国時代を活かしているだけなので、時代考証などうるさい人は見てはいけないかもしれません。

好き

主人公の唯がかわいい

「アシガール」の魅力はなんといっても主人公の速川 唯のキャラクターでしょう。

主人公の速川 唯は走ることだけが取り柄。頭がよいわけでもなく、色気より食い気の元気な子。女子よりも男子と遊ぶのが好きそうな、クラスに一人はこんな子がいるんじゃないでしょうか。絵柄は決して美形でなく、外見はあまりかわいくありません。

で、そんな子がタイムスリップ先のイケメン若殿様に一目ぼれしちゃいます。「何にもわかんないけど とにかく もうっ・・・もうっ・・・ すんんんんんんんんんごい 好きっっ!!」と。

そこからの唯の頑張りが、なんというか、いいです。恋にのぼせながら、若様のために突っ込んでいく様子がとても楽しく、また、かわいいです。うちの娘がこんな子に育ったら大変だけど、知り合いの子だったらほほえましく見ていられる感じ...と言って伝わるでしょうか。


あまり読まない少女マンガですが、続きが気になる僕的なヒット作です。

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