子どもに読ませたい漫画の感想、レビュー

3人の子を持つ漫画好きの父親が、これまでの読んだ1万冊以上の漫画の中から子どもに読ませたい漫画を紹介します。

赤ちゃん用の本が絵本から始まるように、文字だけでなく絵でも情報を伝えてくれる漫画は子どもが情報を吸収するためにはとても便利な媒体です。子どもに読ませたい(読ませたくないと思ったものも含め)漫画を感想・レビューとともに紹介します。
漫画の簡易評価をカテゴリとして整理していますので、お勧め漫画から見たい方はカテゴリもご参照ください。

  • お勧め度: ☆☆(経済の入門にも)
  • 対象年齢: 6歳以上(ストーリが苦手でなければ低学年でも)
  • 初発表年: 2007年
狼と香辛料

ストーリー

馬車で各地をめぐり、さまざまな物品を取引する行商人、クラフト・ロレンス。
麦の取引に訪れた村、パスロエで、彼は馬車の荷台に潜り込んでいた少女──ホロと出会う。自分は麦の豊作を司る狼神だという彼女には、確かに狼の耳と尻尾が生えていた。ロレンスは、そんな彼女を疑いながらも、彼女の故郷であるという北の地・ヨイツへの旅を共にすることに。港町・パッツィオ、教会都市・リュビンハイゲンでの「冒険」を経て、互いを理解していったふたりは、旅の仲間として絆を深めていく。
そしてふたりは、ホロの故郷の記録を持つ者がいるかもしれないという町、クメルスンを目指す。祭りに湧きかえる町でふたりを待っていたのは──。

人気ラノベの漫画化

「狼と香辛料」はシリーズ累計400万部を超える同名のライトノベルを漫画化した作品です。中世ヨーロッパをイメージしたファンタジーでありがちな世界観ながらも、剣と魔法による争いではなく経済を中心とした頭脳戦を中心としたストーリー展開が評判になり、宝島社発行誌『このライトノベルがすごい!』では2007年度に1位を獲得しています。

原作つきの漫画では、原作のイメージがうまく表現されずに、元々のファンからそっぽを向かれてしまう作品も多いのですが、「狼と香辛料」では原作のイメージを壊すことなく、むしろ生かしながら二次元化に成功した作品だと思います。

ファンタジーと経済

ファンタジーの世界では戦士とか魔法使いといった職業に焦点が当たることが多いのですが、あえて商人を主人公にしている点がとても面白い作品です。ファンタジーの世界であっても、そこで人が生活している以上、何らかの経済活動は行われているはずなんですよね。

中世社会風の経済の設定や、町や宗教に応じた経済観など、経済をテーマのひとつとするだけあって、世界観がしっかり作りこまれているので読みがいがあります。

商取引を中心とした心理戦

バトル漫画の世界では、「ハンター×ハンター」のように、技の駆け引きや言葉の駆け引きを楽しめる漫画も少なくないのですが、商取引を中心にしながら、ここまで心理戦を描いている漫画は少ないのではないでしょうか。

ビジネスの入門漫画として十分に楽しめる内容です。


小説も読んでほしいです

ただ、「狼と香辛料」。漫画版はなかなか続きが出ません。それどころか、小説版にはあっても、漫画化されていない巻もあります。

小説の5,6,12巻はほとんど触れられておらず、10巻はまったく触れられていません。また、2017年2月現在で、小説の17巻以降は漫画化が終了していません。

漫画で描かれているロレンスやホロの今後や、漫画化されなかったストーリーが気になるようだったら、是非、小説も手にとってほしいです。小説版も読みやすい軽い文体ですし、漫画から小説の世界への入り口にも良い作品だと思います。

(実際、うちの長男は続きが気になって図書館で小説を借りてきていました)

【合本版】狼と香辛料 1~17巻収録<【合本版】狼と香辛料> (電撃文庫)
支倉 凍砂
KADOKAWA / アスキー・メディアワークス
2016-07-10

  • お勧め度: ☆☆(ビジネスの入門に)
  • 対象年齢: 10歳以上(面白く感じるのは高学年から?)
  • 初発表年: 2012年
市場クロガネは稼ぎたい

ストーリー

少年よ大金を抱け?学園マネーゲーム開幕!

私立・学円園学園。ここは一風変わった教育システムを基としている。
それは…学園内で稼いだ”金”が進級・卒業・就職の全てを決める、というもの! このシステムで実社会へ有用な人材を送り出しているのだ。
そして今この学園に、1人の少年が降り立った。その男の名は市場クロガネ! 財閥御曹司でありながら、自らの力を試しにこの学園へ入学したのだった……働く女のコが盛りだくさんの、学園マネーゲーム開幕!!

ありそうでなかった

「市場クロガネは稼ぎたい」はありそうでなかった学園もの漫画とビジネス漫画のコラボレーション作品です。(僕が知らないだけで、他にあるのかもしれませんが)

学園内で稼いだお金で学校内での序列が変わっていくため、部活動という名の会社組織を中心としてどたばたストーリーが展開していきます。

金儲けは悪

お金は大事

お金を稼ぐことにマイナスイメージを持つ人もおおいのですが、資本主義の世の中で生きていく以上、お金からは離れることができません。「市場クロガネは稼ぎたい」のテーマはそんなお金です。

といっても、もしドラのように経済学者の著作をベースにしているわけではなく、作者自身が勉強しながらストーリーを作っているようで親しみやすい内容です。

作者自身が勉強しながらだからか、経済的な要素は入門程度の内容ですが、成果主義的な考え方や最適配分の考え方など、子どもの入門としては丁度よいレベルだと思います。

お金を稼ぐことを通じて、登場人物たちが人生そのものについても悩むあたり、大人でも考えさせられる点が多いのではないでしょうか。

萌え絵

学園物語という設定で、学園内での物語というのも子どもたちには身近な世界をイメージしやすくて良いでしょう。また、出てくるキャラクターが今風の萌え絵で、女性キャラクターが多いあたりも子どもにはとっつきやすいかもしれません。

(これだけ可愛い子がでてくるのに、ラブコメ要素が一切無いのも面白いですが)

細かく言い出すと...

普通の勉学はどうしているんだろうとか、その土地・その人口で完全自給自足が成り立つわけ無いんじゃ...とか、大人の目で見てしまうと変なところが気になってしまいますが、そこは漫画の世界ということで横においておきましょう。

細かいところを気にせずに、読める方におすすめです。


  • お勧め度: ☆☆(楽しいレシピ漫画)
  • 対象年齢: 10歳以上(料理を身近に)
  • 初発表年: 1985年
セイシュンの食卓

概要

あり合わせの材料で簡単で、安く、美味しく作れるアイデア料理のレシピを紹介したもので、冷凍食品やレトルト食品、缶詰などコンビニで手に入る既成品をベースとしたのが最大の特徴であり、当時としては非常に画期的なレシピ集であった。また後述するとおりテレビアニメやバラエティ番組の放送、丸美屋食品工業からこの漫画とのタイアップ商品のふりかけが発売、更に松下電器(現・パナソニック)による電子レンジメニューでの展開と、各種メディアミックスも行われた。その中のメニューである「ゴハンバーグ」がクイズダービーの問題で使用された(第627回、1988年2月13日放送分の7問目にて)。

これで料理覚えました

19歳で上京し、若くて貧乏な時代。そんな僕の部屋にあった唯一の料理レシピ本が「セイシュンの食卓」でした。

肩を張らない楽しい漫画とお手軽なレシピが載っていて、この本にどれだけ助けられたことでしょう。今も料理が苦にならないのはこの本と世界の料理ショーのグラハム・カーのおかげだと思います。

我が家の子どもたちが料理への抵抗感が無いのも、この本のおかげかもしれません。

料理は難しくない

「セイシュンの食卓」が教えてくれるメッセージは料理は決して難しいものではないこと。そして、ほんのひと手間かけるだけで、料理はおいしく変身することです。

コンビニのおでんにゆでうどんを突っ込んでレンジであっためてもらう「おどん」なんてものもあって、料理をこれから始める若者にとって、こんなに敷居の低いレシピ本は無いでしょう。

若者に!

レシピ本ではありますが、セイシュン食卓には高価な食材や見慣れない食材は出てきません。レトルト食品や缶詰、納豆といったB級食材をつかって料理していきます。

お金が無い若者でもできる料理ばかりなので、一人暮らしをはじめる若者にこそ読んでほしい本です。

今ならWebで

「セイシュンの食卓」は、今ならオンラインで読むこともできます。セイシュンの食卓 公式サイトなら会員登録をすれば、すべての漫画コンテンツが無料!未読の方、まずは、オンラインで読んでみてはいかがでしょうか?


オトナになったセイシュンの食卓
たけだみりこ
永岡書店
2016-09-15

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