子どもに読ませたい漫画の感想、レビュー

3人の子を持つ漫画好きの父親が、これまでの読んだ1万冊以上の漫画の中から子どもに読ませたい漫画を紹介します。

赤ちゃん用の本が絵本から始まるように、文字だけでなく絵でも情報を伝えてくれる漫画は子どもが情報を吸収するためにはとても便利な媒体です。子どもに読ませたい(読ませたくないと思ったものも含め)漫画を感想・レビューとともに紹介します。
漫画の簡易評価をカテゴリとして整理していますので、お勧め漫画から見たい方はカテゴリもご参照ください。

  • お勧め度: ☆☆(一度は読みたい)
  • 対象年齢: 6歳以上(少年から熱さを忘れた大人まで)
  • 初発表年: 1995年
daogo

とにかく熱い話

初連載は20年前の消防士の物語。熱い思いを胸に秘めた...というか、秘めずに熱い思いをむき出しの新任消防士が、難しい現場に出会いながら成長していく物語です。

感想は熱い!消防士という職業だからか、とにかく熱い。暑苦しいほどです。

あらすじ

幼い頃に巻き込まれた火災で消防士・のちのめだかが浜出張所所長・五味に助けられた朝比奈大吾は、いわゆる「不良」であった学生時代、恩師・落合に幼き頃からの夢であった職が消防士であった事に気付かされ(大吾にとっての「スーパーマン」である)、自らも消防士になる事を目指し、見事採用試験に合格。千国市消防学校での研修を経て、地元の千国市消防局めだかヶ浜出張所に配属される。
ところが大吾が配属されためだかヶ浜は、開発の初期段階で、住民の防災意識もあり、めったに火事が起きず出動もほとんど無い平和な地域。それゆえに隊員たちの士気も低く、“めったに火事が起きない「め組」”や“目出度い「め組」”と揶揄される出張所だった。若く血気盛んな大吾は、その現状に我慢ができず、ストレスを溜める毎日を過ごすことになる。ところが、度重なる出動を経験することで、大吾は自らの所属するチームが、最高のプロフェッショナル・チームである事を思い知る。そして、出動を重ねていき大吾自身も災害の恐怖と闘いながら成長していく。一方で度重なる都市の乱開発により、めだかヶ浜も変わりつつあった。変わる都市。変わる自然。人間が作り上げた街が人間に牙を向き住民を襲う。そんな中で大吾は、時に問題児扱いされながらも持てる力を駆使して災害に巻き込まれた人々を救っていく事になる。

魅力的な登場人物

熱さむき出しの主人公に、厳しくも温かみがある頼れる上司や先輩たち。命を守る現場に、命がけで取り組んでいる熱い話です。

ストーリーの盛り上げ方も旨く、何事にも真剣に一生懸命取り組む様子に引き込まれ、文庫版コミックでも11巻というそれなりのボリュームがあるにもかかわらず、僕も一気に読んでしましました。

小学校低学年でも読めます

め組の大吾では漢字にふり仮名がふられているので、小学校低学年からも読むことができます。

今は小5になった次男が小学校1年生のころ、消防署の公開日にはしご車に乗せてもらい「消防士になる」と宣言したことがきっかけで買いました。小学生男児にこの熱い物語はどんぴしゃだったようです。

でも、我が家の小1女子は、ぱらぱらとめくって見たものの、2巻以上に進むことがありませんでした。ストーリーはそんなに難しくないとは思うのですが、女子には話に興味が持てなかったのかも。

大人の視点ではちょっと物足りないかも

娘だけでなく、反抗期に入りかけの中学1年だった長男にも不評でした。主人公の大吾が超人的すぎて、消防の現場も非現実的というか、いかにも感動させてやるという臭いがして嫌だそうです。

そんな気持ちもわかるし、大吾のような無鉄砲なのがチーム内に居たら、実際の現場では大迷惑だろうなぁ...と管理職になってしまった父も思うのでした。

熱分がほしい人にお勧め

この漫画、2004年には 山田孝之主演でドラマ化もされていたいたそう。白けた世の中になってきて、こういう熱い人とが少ないので、逆にこういう熱い人が求められているのかもしれません。

我が家の子どもたちの反応にもあるとおり、好き嫌いは分かれそうですが小学館のサイトで試し読みもできるので、試し読みで面白そうと思った方は、是非。

ファイアーボーイズ・め組の大吾 完全版 DVD-BOX
山田孝之
フジテレビジョン
2004-06-30


  • お勧め度: ☆☆☆☆(殿堂入り)
  • 対象年齢: 10歳以上(小学校高学年から読ませたい)
  • 初発表年: 1979年
風雲児たち

最もお勧めの歴史漫画

昭和54年から書き続けられている歴史漫画。残念ながらこの漫画を知ったのは成人してからでしたが、中高生時代にこの漫画に出合っていたら違う人生を歩んでいたかもしれないと思わせる、それだけのインパクトを与えてくれた本。

教科書や資料集の中の人も、実際に生きていたんだ。同じように息をして、迷ったり、悩んだりしていたんだということがわかり、歴史を身近に感じられるお勧めの漫画は「風雲児たち」です。

概要

当初の編集部からの依頼は、幕末の群像を五稜郭陥落まで単行本10巻程度でまとめてほしいというものであったが、幕末の状況はそもそも江戸幕府の成立に根があるとの作者のみなもとの判断により、関ヶ原の戦いより執筆を開始した。これが編集部の企画を大幅に狂わせ、江戸時代300年を通して時代の発展に関わった人間たちの運命を描く大河ドラマ漫画となる。
漫画やアニメ、漫才師やコメディアンのネタ(特に吉本新喜劇)、時代劇、映画、TV、時事ネタなどをパロディとしてギャグにしているのも特徴である。また、時代を経て分かり難くなったギャグの解説のため「脚注」をもじった「ギャグ注」を、ワイド版では各巻末に収録している。
執筆当時に入手可能な最新の史的資料を調査した上で執筆されているため、それまでの多くの歴史フィクションでよく見られたステレオタイプの視点や、学校などで習う標準的な歴史観を脱しており、時に保科正之のようにそれまで注目されていなかったマイナーな人物にスポットが当てられたり、田沼意次のように悪人と見られがちな人物を史実に基づき肯定的に描くなどしている。逆に、松平定信のように従来は肯定的に描かれることが多かった人物の否定的側面を取り上げていることもある。人物の善悪を分けたとき、権力側ではなく民衆に立って行動した者を善玉としている。
wikipediaより

小学館の漫画日本の歴史も良いんですが…

子どものころ、小学館の漫画日本の歴史は愛読していて、歴史のテスト中に「あ、これは何巻の左上にあった話だ」と思い出して回答するほど受験にも役立ちました。

でも、「風雲児たち」と比較してしまうと、所詮は教科書をビジュアル化しただけというか、本当は面白い小説なのにあらすじだけを追ってしまっている感じです。


歴史は一人ひとりが作っている

「自分がやっていること何てたいしたことが無い」「一人ができることなんてちっぽけなこと」そんな無力感を感じてしまうこともあるかもしれませんが、そんなことはありません。

教科書には歴史の結果しか出ていませんが、結果にいたるには当然ながら生身の人間が苦しんで生み出した過程があるのです。また、歴史は個別の事件の集合体ではなく、それぞれが縦糸横糸となり複雑に絡み合っています。

「風雲児たち」の中では歴史上の偉人たちが時には悩み、時には感情を爆発させ、時には失敗しながら、さまざまな決断を下していって、歴史という大きな布をつむいでいきます。

そして、この大きな流れは僕たちにしっかりと受け継がれているのです。

うちの子供たちは

長男が中一のときに幕末編まで含めた、当時発行されていたすべての巻をプレゼントしました。おかげで長男は江戸時代から幕末にかけての歴史問題が大得意です。

「風雲児たち」をきっかけに歴史物に興味を持ち出し、司馬遼太郎や藤沢周平、宮部みゆきといった歴史小説にも手を出すようになりました。


そんなこんなでお勧めです

「風雲児たち」は知名度が低いようですが、これ、本当にお勧めです。ギャグ漫画風の絵柄がしっくり来ない方もいらっしゃるかもしれませんが、読んでいるうちに気にならなくなります。未読の方は是非。

(ちなみに、漫画ではかなり崩して描かれている小早川秀秋は肖像画もへたれ顔)

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