• お勧め度: ☆☆☆(相手への思いやりを学びたい)

  • 対象年齢: 15歳以上(外交や政治が絡むので中学生くらいから)

  • 初発表年: 1998年


あらすじ


主人公・大沢公は大量の料理をつくる組織の歯車であることに疑問を抱き、「気持ちを届けられる料理」を目指して名門ホテル料理人を辞め、ハノイ市の在ベトナム社会主義共和国日本国大使館公邸の料理人になることになった。高級食材は簡単には手に入りにくいベトナムで、倉木特命全権大使とともに政府高官や各国大使たちとの食卓外交、またベトナムの市場の人たちとの交流を繰り広げる。4年近くにおよぶベトナムでの生活の後、倉木大使とともに帰国。14巻[コミック版]からは遊軍大使となった倉木の直属料理人として国際政治の舞台で腕を振るう。

現実の外交・政治の時事ニュース等をストーリーと関わらせ、またタレーランなどの食卓外交、各料理の起源やお客の個人的な想い出のエピソードが話の広がりを膨らませている。


料理が主役ではない料理漫画


ジャンル的には料理漫画だと思うのですが、この漫画での料理はどちらかというと脇役や小道具です。主役は外交の世界を取り巻く人間模様。


主人公は相手のために気持ちをこめて料理を作ることで、個人が抱える幸せな思い出を呼び起こしたり、不幸せな記憶をかき消したりします。よくある料理漫画のように料理をめぐって争ったりするわけでなく、料理をキーに関係者全員がハッピーになるようなWin-Winの関係を築いていくので読後感も非常にさわやかです。


大使閣下の料理人_ものさし

世界は広くものさしは沢山


第一話で主人公の助手が「日本語基準に考えたら毎日いらいらすることばかり。それがベトナムのものさしです」と主人公に伝えています。


まさにその通りで、主人公はこの言葉通り相手のものさしに合わせて料理を作っていくのです。その結果、大使には「彼のおかげで思うような外交ができた」と最高の評価を受けます。


人それぞれ物差しが違うのは、国という大きな単位だけでなく個人個人でもそうです。うちの子どもたちにも、相手がどんな物差しを持っているのか思いやって対応できるような人になってほしいです。


大使閣下の料理人

もちろん、食や外交、政治についても学べます


主人公がフランス料理人ということで、フランス料理の知識も学べますし、ベトナムや香港、タイなど主人公が出かけるのとともに世界各国の食について知ることができます。


また、食だけでなく北朝鮮の核問題や台湾総統の来日問題などの政治・外交問題も取り上げられており、。


賞を受賞し、ドラマ化もされました


この漫画は、平成14年度(2002年度、第6回)文化庁メディア芸術祭マンガ部門の優秀賞受賞作品を受賞し、また、2015年にはジャニーズの人が主演でドラマ化もされました。


自分の物差しを押し付けず、相手のために料理を作るというのはおもてなしの基本だと思います。


主人公の家族への態度など全面的に賛成できる人ではないかもしれませんが、それでも、お勧めしたい漫画です。