- お勧め度: ☆☆☆(いい本です、小中学校に置いてほしいくらい)
- 対象年齢: 10歳以上(人生に悩んだら)
- 初発表年: 1999年

あらすじ
時代は2070年代(2075年以降)。人類は宇宙開発を進め、月面でのヘリウム3の採掘など、資源開発が商業規模で行われている。火星には実験居住施設もあり、木星・土星への有人探査計画も進んでいる。毎日、地上と宇宙とを結ぶ高々度旅客機は軌道上と宇宙とを往復し、宇宙ステーションや月面には多くの人たちが生活し、様々な仕事をしている。しかし、長い宇宙開発の歴史の影で生まれたスペースデブリ(宇宙空間のゴミ。廃棄された人工衛星や、ロケットの残骸など)は軌道上にあふれ、実際にたびたび旅客機と衝突事故を起こすなど、社会問題となっていた。
また、地上の貧困・紛争問題は未解決のままで、宇宙開発の恩恵は、先進各国の独占状態にある。このため貧困による僻みや思想的な理由付けによるテロの問題も、また未解決である。
主人公のハチマキは宇宙で働くサラリーマン。主な仕事は宇宙のゴミ「デブリ」の回収作業。いつか自分個人の宇宙船を所有することを夢みている。ゴミ拾いは大事な仕事だと自分を納得させつつ、当初の夢と現実の狭間でこのまま現実を受け入れるか、それとも夢を追い求めるか思い悩む。
宇宙で淡々と暮らす
宇宙飛行士になりたいといった長男のために買った宇宙をテーマとした漫画のひとつ。宇宙を舞台としたSFではあるんですが、宇宙が主題ではなくて主題はそこで暮らす人の心。
いわゆるSF物語のような派手な戦闘や目を引くようなイベントが連なるわけではありません。登場人物たちにとって宇宙で暮らすことは当たり前で、基本的には日常が淡々と過ぎていきます。
そんな中、登場人物たちには現代に生きる僕らと同じように、自分の生きる目的や世の中の矛盾など様々な葛藤を抱えています。
一人で生きようとしてた男が変わっていく
主人公のハチマキは自分の宇宙船を手に入れるという夢を持っています。大きすぎる夢が叶えられないんじゃないかという不安を持ち、夢をかなえるためには孤独に努力を重ねようと決めていました。社会への不満、社会から背をそむけようという気持ちもあったのでしょう。
そんなハチマキが、ヒロインであるタナベをはじめとする周囲の人々との触れ合いの中で徐々に考えを変えていきます。
しんみりと読後をかみ締めたい
ハチマキがどう変わっていったのかは、ぜひ、本を手にとって確かめてみてください。
ハチマキ以外にも人それぞれに共感できる登場人物がいるのではないかと思います。読み終わった後、自分の人生について、生きることについて、夢について一人思索にふけりたくなる物語です。
もちろん、子どもにもお勧め
多くの子どもは、小学校高学年から中学校へとなるころに、ハチマキのように夢と現実との乖離に悩むのではないかと思います。
そんな子には、ハチマキのようにまっすぐぶち当たりつつも苦悩して成長してほしい。小学校や中学校の図書館においてもいいんじゃないかなぁ。そのくらい、お勧めです。
あと...
この本を読むととんかつが食べたくなります。「 断然ロースだね。ヒレは邪道だ」