- お勧め度: ☆☆(ドラマ化もされました)
- 対象年齢: 10歳以上
- 初発表年: 2000年
あらすじ
五島健助は優秀な医師で、東京の大学附属病院に勤めていたが、とある理由から離島の古志木島の診療所に赴任する。島は3ヶ月の間無医村状態で、過去に良い医師が来たことがなかったからか、あまり歓迎されなかった。また、4ヶ月前から来ていた看護師の星野彩佳から、診療所に来る患者は少なく、来ても応急処置だけを受けた後、船で6時間かけて本土の病院へ行くことを聞かされる。
実際になかなか患者が来ない中、島に来るときに運んでもらった漁師・原剛利の息子が最初の患者となり、これを見事な手術で助ける。原は、お礼として診療所に看板を贈るが、名前を間違えられていて、看板は「Dr.コトー診療所」となっていた。
それ以後、五島は多くの患者の治療とその人柄により、島民の信頼を得ていくことになる。

神の手漫画
スーパーヒーロー的な神の手を持つ医者が主人公の漫画です。子どもにとっては「この医者すげー。こんな風になりたい」と気持ちよい読後感がもてる作品です。
大人になってしまうと、神の目とも言える正確な診察に、揺れる船の上でも最低限の設備で手術をしてしまうスーパードクターは、明らかに現実離れしています。そんなこんなで大人が読むにはリアリティがなぁ…と思ってしまうところもありますが…子どもは楽しく読んでいる様子。
離島に縁のあるものとしては
と、もっともらしい小言を並べて格好つけてみましたが、離島に少し縁がある者としては、離島医療に光を当ててくれたというだけで大満足です。
「Dr.コトー診療所」でも取り上げられている島の過疎化と高齢化、そして医師不足や医療技術不足は深刻です。
離島医療の現実
Dr.コトーのような神の目、神の手を持つ医者は限られていますし、ずっと離島に勤務していては最新の医療技術を追えなくなるデメリットがあります。実際の離島の病院では、老人医療が中心で漫画のような外科手術の機会なんてほとんどありませんから。
そんな背景もあり、離島の医療は従来どおりの「患者を本土に搬送する」方法と「専門知識を持つ医師が離島を巡回する」方法の二つがあります。
従来、本土へ診察に行くために船代と宿代を払い、ときにはチャーター代まで支払うのは大きな負担でした。鹿児島や沖縄の多くの離島では、徳州会病院グループのおかげで、患者が本土へ行かなくても本土から医者が来てくれる環境が整ってきています。徳州会病院グループを作られた徳田虎雄先生は、選挙違反で黒いイメージがついてしまいましたが、私のような離島に縁があるものとしては、感謝してもしきれません。
離島や僻地医療を考えるきっかけに
「子どもに」というこのブログのメインテーマからは脱線してしまいましたが、離島医療や僻地医療を考えるきっかけとして多くの人にこの漫画を読んでほしいです。
子どもには難しい話は置いておいて、スーパードクターの手腕に驚きながら、頭の片隅に離島医療や僻地医療のことが残ればいいと思います。