- お勧め度: ☆☆☆(日本的なファンタジー)
- 対象年齢: 10歳以上(静かな物語)
- 初発表年: 1999年

概要
「蟲師」を生業とする主人公「ギンコ」が、様々な「蟲」によって引き起こされる事象に対峙していく物語。
1999年に講談社『月刊アフタヌーン』の増刊号『アフタヌーンシーズン増刊』にて連載開始。同誌の休刊後は『月刊アフタヌーン』本誌に移り2003年から2008年まで隔月連載された。その後、2013年に特別篇「日蝕む翳(ひはむかげ)」が同誌2014年1月号と2月号に前後篇で連載された。大半のエピソードにカラー画稿が存在しているのも特徴。
時代背景は作者曰く「鎖国を続けた日本」もしくは「江戸期と明治期の間にある架空の時代」で、登場人物は(主人公のギンコを除いて)和装をしており、風景も日本の原風景を思い起こさせるようなノスタルジックなものとなっている。また、物語の語り方として必ず人物の回想を用いる点も特徴的であり、ギンコが行動する時間や行動範囲に収まらず、伝聞による時間・世界も描かれている。
2003年の文化庁メディア芸術祭・漫画部門優秀賞、2006年の第30回講談社漫画賞・一般部門受賞、2007年の文化庁メディア芸術祭「日本のメディア芸術100選」マンガ部門選出。
不思議な物語
妖怪などをモチーフに作者が産み出した「蟲」。さまざまな怪異現象の原因になることがあります。主人公ギンコは、蟲専門の研究者であり、医者として、「蟲」が引き起こす怪異現象や「蟲」と人との問題を解決していきます。
線の細い独特の絵と、静かに淡々と進んでいく物語によって、蟲師の不思議な世界へと知らず知らずに引き込まれていきます。
猫絵十兵衛とも似た雰囲気のある漫画ですが、蟲師のほうが物静かで自然との共存を重視している印象です。猫が街中にいて、蟲が自然由来なので当然かもしれませんが。
自然との対峙
「蟲」は人に害を成すこともあるのですが、「蟲」自体はただ生きているだけ。蟲師であるギンコは、人間と蟲とのどちらに組するわけでもなく、中立的な存在として、蟲と人との共存を助けていきます。
西洋的な自然をねじ伏せるような自然観でなく、自然と人との共用を目指す、日本的なアミニズムの考えが流れているようです。
わかりやすい一話完結
蟲師の特徴の一つは、基本的に、一話完結型であることです。
蟲が出てきて、ギンコが原因を探し、原因を見つけ、解決するという起承転結の基本パターンができているので非常に読み安く、物語のあらすじを追うのが苦手な子どもにもお勧めです。
昔話のよう
蟲と人との寓話を通じて自然との繋がりについて教えてくれ、一話完結の起承転結物語なので、日本の昔話と通じるものがあるような気がします。
静かに流れていく物語の世界観もまた、昔話を想像させるのかもしれません。
我が家の子どもたちは
妖怪や不思議な話が大好きな小五次男も、人情物話が好きな中三長男もこの漫画はお気に入りの一つだそう。アニメ化や映画化もされた話なので、多くの人が高い評価をしている作品でもあると思います。