• お勧め度: ☆☆☆(教養としても娯楽としても)
  • 対象年齢: 10歳以上(リアルな手術描写もあります)
  • 初発表年: 1994年
仁

ストーリー

東都大学附属病院の脳外科医・南方仁は、ある夜急患で運ばれた男性の脳から奇形腫を摘出する。その奇形腫は、胎児のようだ。その後、仁は頭痛と空耳に悩まされる。その患者は、なぜか病院から脱走しようとしていた。仁が、その患者を止めようとしたとき、患者が持っていた胎児のはいった容器が階段から落ち、仁は、それを取ろうとバランスを崩し、階段から落ちて、そのまま気絶してしまう。意識を取り戻した仁が、ふと辺りを見渡すと、夜で、侍達が斬り合いをしていた。仁は文久2年(1862年)、幕末の江戸時代にタイムスリップをしていたのだった。仁は、まず、そこで切られた侍の脳の手術をすることになる。 その後、侍に切られた外国人の手術をしたり、コレラへの対応をしたり。
そこで仁は、過去の人間の運命や歴史を変えていることを自覚しつつも、人々を救う為、現代から持ち込んだ知識と幕末の人々の協力により、近代医療を実現していく。 登場人物

良くあるタイムスリップものと思いきや

「JIN―仁―」は現代の脳外科医が幕末期にタイムスリップをして、幕末期と現代の医療技術の溝を埋めながら患者を治療していく医療漫画です。

良くあるタイムスリップもの漫画ではあるのですが、主人公の南方仁が一人で幕末から現代までの医療知識の溝を埋めていきます。医療器具も薬も現代とは大きく違う状況にあるにもかかわらず、ペニシリン薬を作り出すなど、医療や化学の進歩を一人で追体験していきます。

丁寧に取材をされているようで、そこだけを見ても学習漫画として十分すぎる内容になっています。

偉人達の描写も

緒方洪庵や松本良順、楠本イネといった幕末期の医療従事者や、坂本竜馬や勝麟太郎といった歴史上の偉人まで、さまざまな偉人が描かれます。

江戸期ならではの漢方医と蘭方医の覇権争いや坂本竜馬の暗殺事件といった歴史と絡めた人間ドラマもまた「JIN―仁―」の魅力のひとつです。

JIN

まっすぐな主人公

親の目として、子どもにこの漫画を読ませる際に一番学んでほしいのは主人公の姿勢です。普通の町医者がいきなり江戸時代に放り込まれたら、器具も薬もない中で途方にくれるしかないのではないでしょうか。もしくは、現代知識を使って一儲けしてやろうと邪な心を抱くのではないでしょうか。

そんな状況にもかかわらず、コレラや感染症など、身の回りの人だけでなく世界中の人々を救いたい私利私欲なく治療に邁進します。さまざまな障害や敵対する人も出てくるのですが、それを乗り越えていきます。

うちの子にも、こんなまっすぐな大人に育ってほしいものです。