• お勧め度: ☆☆☆(名作!)
  • 対象年齢: 15歳以上(残酷な描写も多いので)
  • 初発表年: 1998年
バガボンド

作品紹介

剣における天下無双を目指し、殺し合いの螺旋の中へと身を投じていく宮本武蔵。同じく、剣の道を究めんとする者たちは、放浪の人(バガボンド)となり、その運命に翻弄されていく——。
井上雄彦が吉川英治の小説をもとに描く、大胆かつ斬新な「宮本武蔵」。講談社漫画賞、文化庁メディア芸術祭大賞、手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞の傑作。

強いとは何か

多くの日本人が名前を聞いたことのある剣豪宮本武蔵。その武蔵を主人公とした漫画がバガボンドです。

吉川栄治氏の宮本武蔵をベースにしつつも、吉川版よりも若く、強いとは何か、自分の生きる道は何かを悩み続ける武蔵が描かれています。

武蔵

迫力がすごい

強いとは何か、剣の道とは何か、命とは何か。主人公の武蔵は悩み続けます。バガボンドは漫画には珍しく、筆で書かれており、武蔵が生きた戦国末期から江戸時代の世界観とマッチします。それどころか、筆の流れが生み出す勢いが、剣を用いた殺し合いの迫力や武蔵の葛藤を、ものすごい迫力とともに伝えてくれます。

少年剣士の端くれだったものの、とうてい、武蔵の悩みの境地までは至れませんでしたが、あのまま剣道を続けていれば...と考えさせられ、また、再び竹刀を振ってみたいと思わされます。

子どもに読ませたくない漫画?

一時ソースがわからなかったのですが、amazonのレビューには

「子供に読ませたくない漫画」と、井上先生自身が公言していました。 何故なら『バガボンド』は、人間の闇を描き、人を傷つける力を持っているから。 始めの武蔵は表紙からも伝わるように、「怒り」や「死の恐怖」で、ガチガチに力が入っています。宮本武蔵という侍の物語であると共に自己のアイデンティティーを模索する悩める青年の物語でもあります。関ヶ原以後、「剣」という物は平和の世で意義を失ってゆきます。
という書き込みがありました。小学生以下の子には読ませたくない漫画だというのは確かにわかります。

人間の闇も書かれているし、残酷描写も多いです。でも、中学生以上の子にはむしろ逆に読んでほしい漫画です。

物語の序盤から悟りを開いてしまっているような吉川版武蔵を原作としているにもかかわらず、バガボンドの武蔵は、バガボンド(=漂流者)のタイトルのとおり、自らの道を探し求めています。自分の生きる道について壁にぶち当たるであろう、中学生・高校生にこそ読んでほしい漫画です。

どう結末が着くのか

2014年の夏に最新刊の37巻が出た後、長期休載しており、続きがとまっています。ネットで様々な情報を探してみると、作者の体調不良というわけではないのですが、筆が止まってしまっている状態のようです。

魂を搾り出して書かれているような漫画なので、筆が止まってしまうのも仕方が無いかもしれません。それに下手に武蔵が悟りきって終わってしまうのなら、今のまま未完であってほしい気もします。これから続くのか、どう完了するのか、楽しみでもあり、怖くもあります。

バガボンド コミック 1-37巻セット (モ-ニングKC) [コミック] 宮本武蔵 全8冊 吉川英治歴史時代文庫 [文庫]

原作。これはこれで読んでほしい。