• お勧め度: ☆☆☆☆(学校図書にしてほしい)
  • 対象年齢: 10歳以上(子どもでも読める推理漫画)
  • 初発表年: 2006年
百姓貴族

概要

北海道十勝で酪農と畑作を営む農家に生まれ、農業高校卒業からマンガ家になるまでの七年間を、農業に従事していた作者の実体験に基づいたエッセイ漫画。
『働かざるもの食うべからず』を家訓に掲げている、作者・荒川弘の実家「荒川農園」(仮称)が主な舞台。幼少期から目の当たりにしていた農家の日常を紹介するとともに、酪農や耕作の実態や荒川の家族の事を主に日本の農業を笑いや薀蓄、仮説を織り交ぜて描かれている。
『百姓貴族』というタイトルに関しては、単行本第1巻の発行後に荒川が度々「よく“百姓”というタイトルを付けられたね」と訊かれているが、荒川自身は「巷では百姓という言葉が差別用語的に言われているが、農業従事者である自分達は平気で“百姓”と言っているし、神経質すぎるのもどうかと思う」「差別がどうこう気にしすぎて、言葉本来の意味が死んだり無かった事にされちゃうのは悲しい」と語っている。

農家の孫として

「百姓貴族」は鋼の錬金術師を書いた漫画家さんが実体験を交えて書く農業エッセー漫画。もう無くなってしまいましたが、僕の祖父は肉牛を育てていましたし、僕自身も何故か富士山麓で乳牛の実習をしたことがあるので、「あるあるあるある」と納得すること多数。

北の大地はまた違うんだろうなぁ。農業の現場を知るものとして、農家の苦労や逞しさがつたわってきます。大変な仕事なんですが、パソコンに向かって仕事するより、大地と向き合って仕事したいなぁ…と別の人生を考えたくなってしまう漫画です。

百姓は差別用語?

「百姓貴族」のタイトルにある「百姓」は差別用語だとか放送禁止用語だとか。でも、うちの祖父なんかは自分のことを「百姓」だといっていたし、100の仕事をするという意味だと知ってからは、むしろ、憧れすら抱く表現です。

実際、僕の祖父なんかは、牛を育てるほかにも自分で食べる分の米や野菜を作っていたし、釣竿から浮きからみんな自分で作って釣りに出かけたり、イノシシが出ればお手製の罠で捕まえて捌いていたし、牛小屋とか納屋とか簡単な大工仕事はみんな自分でこなし、ちょっとした農機具は自分で直していたし、そろばんが得意だったから近所の人の分も税金の手続きしていたり、100以上の仕事をこなしていたんじゃないでしょうか。じいちゃんみたいな人になりたかったなぁ。

「百姓貴族」から、そんな百姓への愛を感じることができます。

荒川弘

社会問題も取り上げる

農家の立場からさまざまな社会問題を取り上げているのも「百姓貴族」の特徴です。食料自給率や高齢化問題、生産調整、農業経営など。

かなり深刻な問題もあるのですが、農業への愛にあふれつつ、比較的軽く、明るいタッチで描かれているので読みやすいです。

子どもの食育にも

都会で育ってしまったわが子、特に最初の子であった長男は、一時期、極端な潔癖症でした。保育園で「汚い。。。」と砂遊びが出来なかったほど。

そんな状況に危機を感じ、家庭菜園を借りたり、農業スクールで一緒に米を育てたり、山海留学に送り込んだりと様々な経験をさせてきました。その成果もあり、今となっては子ども3人とも元気でたくましく育ちました。

どの家庭でも、そんな体験をさせられるわけではないと思いますが、都会暮らしで偏ってしまう子どもの脳みそのバランスをとるには良い本です。この本を読ませて、子どもが興味を持てば、ベランダ菜園からはじめてはいかがでしょうか。


特に都会で育つ子ども達には読ませたい本。学校の図書館にも置いてほしい本です。