- お勧め度: ☆☆☆☆(4巻までなら)
- 対象年齢: 10歳以上(残酷かつ悲惨な描写もありますが)
- 初発表年: 1973年

あらすじ
物語は、広島県広島市舟入本町(現在の広島市中区舟入本町)に住む国民学校2年生の主人公・中岡元(なかおか げん “以下、ゲン”)が、当時日本と交戦していたアメリカ軍により1945年8月6日に投下された原爆で、父・大吉(だいきち)、姉・英子(えいこ)、弟・進次(しんじ)の3人を亡くしながらも、たくましく生きる姿を描く。
戦時下の空気
「はだしのゲン」は、被爆者である作者自身の自伝的な作品です。戦時下、国全体が戦争に向けて高揚する中、反戦的な思想を持つことから「非国民」として様々な嫌がらせを受ける中岡家の様子から始まります。
田舎に住んでいたことがあるからわかるのですが、田舎的な同調意識というか、自由に意見の言えない雰囲気。その中で、自分を貫こうとすることの難しさが伝わってきます。
原爆の悲惨さ
そして、ゲンたちのすむヒロシマは核の火に包まれます。「はだしのゲン」に描かれた被爆直後の広島の町の様子はかなり残酷で悲惨、グロテスクなものでした。僕が小学生のころ、学校の図書館に置かれていた唯一の漫画が「はだしのゲン」でしたが、僕らは肝試しをするように恐る恐る漫画の頁をめくったものでした。
その後見た、アニメ映画でも原爆投下後の様子は悲惨で、目を背ける子どもも多かったように記憶しています。
作者の中沢さん箱の残酷な描写について「それによって原爆に対して嫌悪感を持ってくれればいい」と語っていたそうです。
戦災孤児の逞しさ
ゲンは被爆の後、家族を亡くした後も戦災孤児として、法に触れながらもたくましく生きていきます。今の子どもたちを見ていると信じられないような世の中なんですが、この話もほんの70年前の出来事なんです。僕の祖父は戦地に出向いていましたし、義父は空襲の戦火の元を逃げ回っていたそうです。
近いけれど遠く感じる戦争の現実として、子どもたちに是非読ませたい漫画です。
戦争・原爆への強烈な怒り
「はだしのゲン」から伝わってくるのは、戦争を引き起こした日本の軍部やそのトップである天皇、戦争を礼賛していた市井の人々、そして、原爆を落としたアメリカへの怒りです。こうした怒りは、漫画の中に溢れていて熱として伝わってくるようです。
4巻まで
ただ、気になるのがこの怒りが自虐史観へとつながっていってしまうこと。中沢さんにとっては事実だったのかもしれませんが、本当に軍部はアジアの各国で残酷な行いをしていたのでしょうか。原爆の犠牲となったヒロシマやナガサキの人々は、戦争を終わらせるためにやむを得ない尊い犠牲だったのでしょうか。
後半、中沢さんの怒りからあふれ出る思いが強くなりすぎるため、「はだしのゲン」は4巻まででよかったのではないかと個人的には思います。
4巻までは、日本だけでなく海外も含め、後世まで長く語り継いで欲しい漫画です。
5巻以降は、作者に同調することなく判断できるようになってから、当時の世の中の雰囲気を知ることもあわせて読んで欲しいです。