• お勧め度: ☆☆☆(人生に命に)
  • 対象年齢: 10歳以上(小学生でも十分楽しめます)
  • 初発表年: 2011年
銀の匙

ストーリー

寮があるという理由で大蝦夷農業高校(エゾノー)に入学した八軒勇吾は、悪戦苦闘の日々をおくりながら賢明に悩んで考える。八軒にとっては何もかもが初体験だけど、仲間も楽しみも増えた高校生活。しかし時折、農業の厳しい現実にもぶつかる…
 進路を考える時期になり、八軒は思い切って起業することを決意。「人の夢を否定しない人になりたい。」そんな思いから「絆の農業ビジネスプロジェクト」を立ち上げ、手探りでひとつひとつ実行してみる… そんな農業高校生・八軒と仲間たちの、汗と涙と泥まみれの酪農青春グラフィティ!!

農業高校を舞台とした主人公の成長物語

「銀の匙」では、北の大地の農業高校の日常と高校生たちの成長が描かれています。夢を明確に持ち、将来を見越して一日一日を過ごす高校生たちと、夢を描けずに苦悩する主人公。離農により夢をあきらめざるを得ない仲間。

仲間たちと農業という、衣食住に根ざした人が生きるうえでの根源ともなる産業を学ぶ中で、その厳しい現実を知り、やりたいことを見つけ、主人公が成長していきます。

農業高校への偏見が無くなる

「銀の匙」を読むまでは農業高校の中の生活なんて考えたこともありませんでしたし、農業高校なんて偏差値的に普通高校へ行けない農家の跡取りが通う学校だという偏見すら持っていました。

主人公の八軒勇吾は受験戦争に敗れたというか、受験戦争から逃げ出して農業高校を選びました。八軒自身にも僕が抱いていたと同じような偏見があったんじゃないでしょうか。

でも、八軒は農業高校でそうではないことを知ります。

農業自体、個人事業主として経営感覚を持って取り組まなくてはいけない事業ということもあり、農業高校の仲間たちは自分の家の農場の経営や将来のことを真剣に考えていました。机に向かって頭だけを働かせてきた八軒にとって、頭と同時に体も動かす農業という産業そのものも大きなカルチャーギャップだったのでしょう。

自分が農業高校にいたら、八軒と同じような戸惑いを感じ、似たような行動を取ってしまうだろうと共感を感じます。高校生だった自分よりも、すっと大人で、先を考えている農家出身のクラスメイトたちからは学ぶことが沢山です。

と畜場

食や命の大切さ

農業高校を舞台にしていることもあり、食や命についても大変考えさせられます。普段、当たり前のように食べている肉や卵で、消費者としての目線だけでは命の消費にまで気づきにくいのですが、八軒は農業高校で自分で育てた豚を加工して食べることになります。

農業高校では日常なんでしょうが、消費者と生産者って、やっぱり見えてくるものが違いますね。命の大切さや食への感謝を感じます。

実体験もしてほしいけれど

実体験と追体験とでは体験の質に違いはあるのでしょうが、追体験であっても、まったく体験しない場合とは雲泥の差があります。僕の子どもたちが将来について考える際に、食や命について考える際に、参考にして何度も目を通してほしい漫画です。