子どもに読ませたい漫画の感想、レビュー

3人の子を持つ漫画好きの父親が、これまでの読んだ1万冊以上の漫画の中から子どもに読ませたい漫画を紹介します。

赤ちゃん用の本が絵本から始まるように、文字だけでなく絵でも情報を伝えてくれる漫画は子どもが情報を吸収するためにはとても便利な媒体です。子どもに読ませたい(読ませたくないと思ったものも含め)漫画を感想・レビューとともに紹介します。
漫画の簡易評価をカテゴリとして整理していますので、お勧め漫画から見たい方はカテゴリもご参照ください。

2017年01月

  • お勧め度: ☆☆(山の魅力と怖さと)
  • 対象年齢: 15歳以上(エグイ姿もたくさん)
  • 初発表年: 2003年
岳

作品概要

若くして世界の名峰に登頂し、アメリカで山岳救助経験を積んだあと、日本へ戻り主に北アルプスで山岳救助ボランティアとして活動していた島崎三歩。そのもとに、椎名久美が長野県警山岳遭難救助隊の新人としてやって来る。
救助隊チーフの野田とボランティアの三歩の指導を受けて訓練、救助をこなしていた椎名だが、実際の現場で遭難者を救うことが出来ない現実に自信を失っていく。そのような厳しい環境にありながらも、なぜ人は山に登るのか、救助を続けるのかを問い続け、様々な現場を経験することで、他の隊員と共に山岳救助のプロとして成長していく。
救助活動の他にも、県警警備隊関係者への訓練などを通して山の安全に関わる人々や、山を訪れる人々との交流を描いている。主な舞台は北アルプスでも最も人気であるとされる、穂高岳、槍ヶ岳周辺、他に長野県松本市を中心に話が進む。

新の主人公は遭難者

「岳」は基本的に一話完結の山岳救助物語です。遭難事故を中心とした、さまざまな山をめぐる物語が展開していきます。全話を通じて登場する登山家であり山岳救助ボランティアである島崎三歩が主人公のようにも見えますが、一話一話を見ると、真の主人公は遭難者たちだと思います。最終章だけは違いますが。

僕自身はちょこっとだけ登山をかじっていますが、島崎三歩は、僕の常識からかけ離れた超人です。そのため、どうしても遭難者目線で読んでしまうからそう思うのかもしれませんが。

三歩

山の怖さ

「岳」は山岳救助の物語ですので、自然の厳しさ、救助できなかった命、目の前で失われていく命がたくさん出てきます。そういう意味では、かなりシビアな物語です。

山は美しいけれども恐ろしいものだということが伝わってきます。でも、これってものすごく大事なことなんです。

僕自身も、19時を過ぎ、暗くなった富士山を懐中電灯も持たずに下山している家族連れに会ったことがあります。予備のヘッドライトを渡し、その後、遭難情報はなかったので無事に下山できたと思いますが。山は、自然は、怖いものでもあるんです。

山の魅力

でも、山は怖いだけのものではありません。僕が文章化すると陳腐な表現になってしまうのですが、自然の壮大さ、都会での生活とは違う非現実感、疲労の先にある達成感といったさまざまな魅力があります。

「岳」はそんな山の魅力も伝わってくる漫画です。危険なだけで何の魅力もないところに、好き好んでいく人はいません。

個人的には子どもたちにも山の魅力を伝えたいんですが...最初に連れて行った山で雨にあって大変な目にあってしまったので、一緒に行ってくれないんですよねぇ。うちの子ども含め、山の魅力も怖さも知ってもらうために読んでほしい漫画です。


賛否両論な終わり方

15巻から最終章に入るのですが、ネット上でもこの最終章からは賛否両論です。ネタバレ禁止を課しているので、詳細は書きませんが、個人的にはもっと違うエンディングがなかったのかな...と思います。

この終わり方だからこそ伝わるメッセージもあるのですが。

  • お勧め度: ☆☆(今の子には微妙かなぁ)
  • 対象年齢: 10歳以上(ロト物語好きなら)
  • 初発表年: 1991年
ロトの紋章

あらすじ

かつて大魔王ゾーマを倒したロトの名を継ぐ勇者アレルの子、ローランとカーメンがアレフガルドより帰ってきた。彼らは地上で自らの国を築き、2つに分かたれたロトの紋章を代々伝えてきた。また、アレルと共に旅をした3人のケンオウ(剣王=戦士フルカス、拳王=武闘家フォン、賢王=賢者カダル)もまた、いずれ現れるであろう闇に対抗するため、子孫にその技を伝承していた。
ゾーマが倒れて100年。世界は異魔神という更なる闇によって脅かされようとしていた。
魔王軍に襲われたカーメン城は陥落してしまうが、産まれたばかりの王子であるロトの子孫アルスは家臣の手により救出され、魔のものの近づけぬ聖域へとかろうじて逃げ延びる。カーメンの王子の懐柔に失敗した魔王軍の襲撃を受けたローラン城も陥落し、産まれたばかりの王子は邪の名前を与えられ、異魔神の配下・魔人王ジャガンとして育てられてしまう。
アルスが聖域に匿われて10年の月日が過ぎた頃、聖域にも魔王軍の魔の手が及び始める。アルスは異魔神を倒すため、3人のケンオウの子孫を探すために仲間と共に旅立つ。

もうひとつのドラクエ漫画

ゲーム「ドラゴンクエスト」を舞台にした漫画といえば、ダイの大冒険がメジャーですが、ゲームも出したエニックスによる漫画化がこの「ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章」です。

ロトの紋章の世界は、DQ3の世界地図そのままですし、時代的にもDQ3とDQ1の間のストーリーなので、ダイの大冒険と比較をすると、よりゲームの世界を残した漫画です。それでも、ドラゴンクエストシリーズの正史には入っていないんですが。

どちらかというと大人寄り

「ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章」は、ゲーム「ドラゴンクエスト」の1から3までを楽しんでいないと、世界観を含め、十分に楽しめない点もあるかもしれません。

掲載誌が大人をターゲットとしていたこともあり、絵柄や登場人物が容赦なく死んでいくストーリーもダイの大冒険よりは大人寄りといった感じです。主人公ですら命を落としますし、主人公の師匠であるルナフレアとか...。

ストーリーは王道

ストーリー自体はゲームのドラゴンクエストのような王道ストーリーです。勇者の血を引く主人公が3人のケンオウ(剣王、拳王、賢王)を集め、さまざまな試練を通じて強くなり、魔王を倒します。特に引き伸ばしもなく、きれいにまとまっています。

そんなストーリーに味を添えるのが、ストーリーの要所要所で登場し、主人公と同じく勇者の血を引くジャガンというライバル。主人公である勇者アルスとジャガンとの最初の戦いでは、勇者アルスのあまりのへたれ具合が目も当てられないほどでしたが、周囲の支えもあって勇気を取り戻し、強くなっていきます。

全体を通じて、大どんでん返しや、あっと驚く展開はほとんどないのですが、なんていうんでしょうか、そういう点も含めてまさにドラゴンクエストな漫画です。

合体魔法

合体魔法!

この漫画の中で、オリジナル要素ではあるのですが、個人的には合体魔法が好きです。当時、風の魔法バギと炎の魔法ギラを組み合わせたバギラなどを見て、自分なりの合体魔法をいろいろ考えて、自由長の片隅に空想した記憶がよみがえります。 われながら空想大好きな子でした。


続編も出ていますが

前作から四半世紀をあけた2004年からは、「ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章 〜紋章を継ぐ者達へ〜」という続編も連載されています。

何か大人の事情があったのか、続編では「ドラゴンクエスト」の要素が薄まっている気もしますが、これはこれで面白いです。というか、ゲームや前作が好きだったので惰性で読み続けている点もあるかもですが...


  • お勧め度: ☆☆(名言がいっぱいです)
  • 対象年齢: 6歳以上(ゲーム好きなら入りやすい漫画)
  • 初発表年: 1989年
ダイの大冒険

あらすじ

かつて世界と人間は、強力な魔族である魔王ハドラー率いる魔王軍によって征服されようとしていた。しかし、勇者とその仲間たちによってハドラーは倒され、モンスターも魔王の支配から解き放たれ、世界に平和が訪れた。
それから十数年後。モンスターが平和に暮らす怪物の島「デルムリン島」で、勇者に憧れる、唯一モンスターでない少年ダイが、心優しい鬼面道士のブラスに育てられながら、ゴールデンメタルスライムのゴメちゃんを始めとする友達のモンスターたちと共に暮らしていた。
時に島に現れた悪い人間を撃退し、時にさらわれたゴメちゃんを助けに島を飛び出したりしながらも平和に暮らしていたが、ある日ゴメちゃんを除いた島のモンスターたちが凶暴化してしまい、ブラスから魔王の復活を聞かされる。狼狽するダイだったが、そこに勇者の家庭教師を名乗る謎の人物アバンとその弟子の魔法使いポップが現れ、島を結界で覆いモンスターたちを魔王の支配から救うと共に、ダイを弟子にして、秘められた力を開花させていく。
しかし、そこに復活したハドラーが現れ、アバンがかつて魔王を倒した勇者であること、自身がハドラーを超える力を持つ大魔王バーンの力で蘇り、再び地上を制圧するために新たな魔王軍が編成されたことを語り、アバンとその弟子たちを殺そうとする。
アバンは弟子を護るために自己犠牲呪文(メガンテ)を使うが、ハドラーは辛うじて生き残る。絶体絶命の窮地の前に、ダイの額に奇妙な紋様が浮かぶと、謎の力が解放されてハドラーを撃退した。その後、アバンの遺志を継いだダイは、ポップと共に大魔王を倒すことを決意し、デルムリン島から旅立っていく。

ゲーム ドラゴンクエストの世界

「DRAGON QUEST -ダイの大冒険-」はRPGゲームの大ヒットシリーズ「ドラゴンクエスト」の世界観を背景にした漫画です。ドラゴンクエスト4の発売に合わせたメディアミックス戦略の一つだったとか。

世界観を背景にしていると入っても、魔王を倒すといった冒険の目的や共通した魔法が出てくる程度で、ストーリー自体はまったくオリジナルです。オリジナルシリーズが大好きだった少年時代、リアルタイムでこの漫画を読んでいたときには「ドラゴンクエストって言ってる癖に、全然ゲームと関係ないし、闘気とか魔法力とかってなんだよ」と食わず嫌いの漫画だったんですが...いやいや、これも名作です。

ポップ

ポップがいい!

「ダイの大冒険」は、そのタイトルどおりメインの主人公は勇者ダイです。正義感が強く、前向きで、能力も強い、誰もがあこがれる勇者。でも、実はダイのパートナーでもあるポップが主人公ともいえるくらい、ポップがいいです。

初登場時のポップは自尊心だけが強いへたれで自己中心的で、修行からも敵からもすぐに逃げ出し、子ども心に「なんでこんなだめ人間が主人公チームにいるんだろう」と思ったものでした。でも、そんなポップが冒険を通じて成長していきます。精神的にも魔法の能力的にも。

成長してからも迷い続けるポップですが、このポップって僕らのような一般人の代表なんですね。ポップという名前も通俗とか大衆という意味のpopがその由来だそう。一般人でも勇気を振り絞って困難に立ち向かうことで成長できることを教えてくれる気がします。

wikipediaによると、連載当初は編集部から「こいついらないから、早く殺せよ」とまで言われていたキャラのようですが、最後まで読むとポップの成長がこの漫画一番の見所だと思います。悩みつつ成長していくポップの周りには名言もたくさんですし。

ポップのキャラクターは最近の漫画で言うと、ワンピースのウソップ見たいといえばわかるでしょうか。超人だらけの中、普通の人が成長していくんです。

敵も成長します

もちろんポップだけでなく、ダイやヒュンケル、マアムといった主人公チームにみんなが成長していきます。でも、成長するのは主人公チームだけじゃないんです。

偽勇者として詐欺を働いていたチームも出てくるのですが、この偽勇者たちですら成長しますし、特にマゾッホという魔法使いはポップの成長に欠かせません。

さらにさらに、適役の魔王ハドラーまでもが勇者たちと切磋琢磨する中で成長していきます。ダイの大冒険はキャラクターたちの成長の物語なんです。

アバンストラッシュ

技がいい!

あと、忘れてはいけないのが技。子どもにとってはちょっと特徴がありつつも簡単に真似できる技がいいです。「アバンストラッシュ」「大地斬」「地雷閃」など、傘や物差し、ほうきを振り回して起こられたのも良い思いでです。

魔法にもオリジナルの魔法が多いですが、中には後にゲームで採用された魔法もあります。かつての僕のように、ドラクエのゲームシリシーズ原理主義者には受け入れがたい点もあるかもしれませんが、いい漫画です!



  • お勧め度: ☆☆☆☆(もう…)
  • 対象年齢: 6歳以上(スポーツやっている子には必須)
  • 初発表年: 1990年
SLAM DUNK

あらすじ

神奈川県立湘北高校に入学した赤い髪の不良少年・桜木花道は、188㎝の長身と抜群の身体能力を見そめられ、バスケットボール部主将・赤木剛憲の妹である晴子にバスケット部への入部を薦められる。晴子に一目惚れした花道は、バスケットボールの全くの初心者であるにもかかわらず、彼女目当てに入部。その後、地道な練習や試合を通じて徐々にバスケットの面白さに目覚め、その才能の芽を急速に開花させる。湘北バスケ部には、監督である安西光義のもと、主将の赤木剛憲と副主将の木暮公延らに加え、スーパールーキーといわれる流川楓らが加入。さらに、前年度のインターハイ県予選ベスト4である陵南高校との練習試合後には、暴力事件を起こして入院をしていた宮城リョータや、バスケ部から離れていた三井寿も復帰する。
夏のインターハイ制覇を目指す湘北は神奈川県予選を順調に勝ち進み、決勝リーグへの進出を懸けてインターハイ常連校の翔陽高校と対戦し勝利する。続く決勝リーグの初戦で「神奈川の王者」といわれる強豪校・海南大附属高校と激戦を繰り広げるも、惜敗。続いて前年度のインターハイ県予選ベスト4である武里高校と宿敵の陵南を破り準優勝。優勝した海南大附属とともにインターハイ出場を果たす。
広島県で行われるインターハイ[8][9]のトーナメント1回戦で、湘北は大阪府代表校の豊玉高校と対戦し、勝利。2回戦では、前年度までのインターハイで3連覇を果たした秋田県代表校の山王工業高校と対戦する。一時は20点以上の差をつけられるが、驚異的な粘りで反撃する。花道は負傷した背中の痛みに耐えながらプレーを続け、試合終了間際のジャンプシュートによる決勝点で湘北を逆転勝利に導く。しかし、全てを出し切った湘北は、続く3回戦で愛知県代表校の愛和学院高校との対戦で、ウソのようにボロ負けした。
インターハイ後、3年生の赤木と木暮が引退。新キャプテンに宮城リョータが就任し、赤木晴子を新たにマネージャーとして迎えるなど、チームは冬の選抜に向けて新体制となる。流川は全日本ジュニアの代表に選ばれる。花道はリハビリを続けながら、再びコートに立てる時を待つ。

時代を感じる面もありますが

スポーツ漫画を語る上で、「SLAM DUNK」は欠かせないんじゃないでしょうか。四半世紀前の作品なので、今読むと、時代を感じさせる描写もありますが、後世に語り継ぎたい漫画のひとつです。

小5次男の担任もスラムダンクのファンのようで、先生の私物だというスラムダンクが学級文庫の一角を占めていました。ああやって子どもたちを洗脳するのもいいですねぇ…

魅力的なキャラクターたち

主人公の桜木花道は少年漫画の主人公にありがちな熱血単純馬鹿ですが、それがまた心地よい熱さです。

チームプレーを行うバスケットボールが主題なので、チームメイトのキャラクターもしっかり立っています。個性豊かな5人のチームメイトそれぞれにエピソードがあり、シューターの三井君周りのエピソードなど、名シーンにあふれています。

もちろん敵チームも魅力的で印象的で、何度読み返しても楽しめます。いろいろな名場面を書きたくもありますが…ネタばれ禁止を課しているので控えさせていただきます。

バスケットボールのスピード感

絵もいいです。バスケットボールの狭いコートの中で繰り広げられるスピードある展開や緊迫感が伝わってきます。この緊迫感は同じ作者のバガボンドでより進化しています。

少年漫画というよりは劇画調に近い絵柄ですが、この絵柄もまた、。ベネッセの宣伝漫画のように苦手な人は少ないのではないでしょうか。

スポーツの魅力

スラムダンクを通じて、何よりも伝わってくるのがスポーツの魅力だと思います。スポーツの魅力を伝える漫画だからこそ、バスケットボールブームを巻き起こしたのでしょう。

勝利に向かって努力していく苦しさ、努力の先にある壁を乗り越えることができたときの充実感。勝利の喜び。負けたけれどすべて出し切ったときの充実感。スポーツそのものを楽しむこと…バスケットボールに限らず、スポーツに取り組むすべての子どもたちに読んでほしいです。

さらにスラムダンクはチームスポーツの魅力でもある、いろいろな考え方や育ち方をしてバックグラウンドも違う仲間たちが、ひとつのチームとしてひとつになっていく魅力も描ききっています。いや、ホント、名作です!


未読の方、これからこの漫画を知ることができるなんて、幸せです!

  • お勧め度: ☆(もやもやが残るかも)
  • 対象年齢: 10歳以上(ダークファンタジーです)
  • 初発表年: 2014年
ILLEGAL RARE

あらすじ

違法希少種(イリーガル・レア)と呼ばれるもその珍しさゆえに狩りの対象になり更に珍しくなっていく幻獣たち。彼らを守るため警察内に希少種犯罪対策課が発足。治安の悪い犯罪都市・スカァシティを舞台に黒吸血鬼・アクセルが躍動する。

西洋の妖怪たち

同じ作者の「ぬらりひょんの孫」は日本の妖怪をベースにした物語でしたが、「ILLEGAL RARE」は西洋の妖怪をベースとした物語(幻獣と呼ばれてますが)。また、前作がやくざ組織を舞台としたものでしたが、こちらは警察を舞台にしたものと、前作と違うアプローチで書こうとした作品のようです。

残念ながら打ち切り

前作の序盤同様、「ILLEGAL RARE」も結構面白いなぁと読んでいたんですが、残念ながら4巻で数々の謎を残したまま打ち切りになってしまいました。

吸血鬼ハンターDじゃないですが、妖怪たち(幻獣でしたっけ)とそれを狩るハンターたちの戦いというのはテーマとして面白いと思うのですが、この漫画も何か一歩足りなかったのでしょう。見所であるはずのバトルは吸血鬼が強すぎるし、黒幕が組織内にいるというありがちなパターンでスモンね...

週刊誌での漫画連載というのはなかなかシビアなものです。できれば、もう1巻分くらいがんばって書いてもらって、もうちょっときれいに終わらせてほしかったんですが。

最大の謎、フクメン

妖怪たちが違法希少種と呼ばれ、狩りや収集の対象となっている世の中。そういった行為を違法とし、自然保護官的に保護活動を行う集団が主人公たちが属する希少種犯罪対策課です。

さまざまな生物を絶滅に追いやってきた人類へのアンチテーゼなんでしょうか。保護活動を行う犯罪対策課の中に、人間が一人しかおらず、妖怪たち(幻獣でしたっけ)自らが警察権力を傘に実力行使しようというのが不思議な感じです。

課長であるフクメンの正体が明らかになれば、このあたりの謎も解決するんでしょうが、謎を謎のまま打ち切りになってしまったので正解はわからずじまいです。

最強の幻獣:吸血鬼

まぁ、でも、吸血鬼という種族が最強の幻獣として描かれていて、実際、段違いに強いのは、強い妖怪が好きな人には爽快です。やり方がえげつなく、ダークファンタジーではありますが、悪が裁かれるのはスカッとします。

青とか赤とか緑とかいろんな色の吸血鬼がいたようなので、それぞれの能力の違いや本当はどんな展開にしたかったのかも気になります。


そんなこんなで、少々もやもや感も残りますが、西洋妖怪好きなら一度読んでも損はないかも。

  • お勧め度: ☆(最初は面白いんですが...)
  • 対象年齢: 6歳以上(怪異が好きな子に)
  • 初発表年: 2008年
ぬらりひょんの孫

あらすじ

奴良リクオは一見はごく普通の中学生だが、実は彼は妖怪「ぬらりひょん」の孫で、4分の1妖怪の血を継いでいる。祖父の組「奴良組」の妖怪達と毎日どたばたと付き合いながら、何とか普通の生活を送っている。
リクオは幼い頃、祖父から色々と武勇伝を聞かされ、妖怪とはかっこいいものであると思っていた。しかし、ある日友人との会話から、妖怪が人間から馬鹿にされる悪い存在であることを知ってしまう。そんな中、妖怪に襲われた友人達を守るために自身の妖怪の血を覚醒させ、友人達を救い出す。だが、4分の1しか妖怪の血を継いでいないリクオは1日の4分の1の時間しか妖怪の姿になれなかった。
そして4年後、中学生になったリクオは人間としての生活を望んでいたものの、組を統率するために妖怪の世界と向き合っていくことになる。

頼もしい妖怪たち

「ぬらりひょんの孫」の主人公は、そのタイトルのとおり、水木先生によって日本妖怪の総大将に祭り上げられた妖怪ぬらりひょんの孫です。

その血の四分の三が人間だからなのか、妖怪にもかかわらず、人間を守る方向にベクトルが向かいます。妖怪の力を持ちながら、人間を守るために戦う姿...元は人間でありながら鬼の手を持った、地獄先生ぬーべーと近いところがあるかもしれません。人間にとってはとても頼もしい味方です。

人間の味方でもある、主人公のリクオやリクオを慕うその配下の妖怪たちは親しみやすく頼もしく格好いい妖怪として描かれているので妖怪好きとしてはうれしいです。

序盤は...

「ぬらりひょんの孫」も序盤は中学校生活と同級生たちによる「怪奇探偵団」を中心に話が進みます。このあたりも、地獄先生ぬーべーと近かったかも。

特に女性キャラがかわいいのも、個人的には高評価です。

まとい

バトル路線に

で、途中からバトル路線に行くのですが、正直、この路線が微妙...。

ぬらりひょんという妖怪の、無銭飲食につながる存在感のなさというか、つかみどころのなさを戦闘技にまで高めているあたりはなかなか面白いなぁと思って読んでいたのですが、途中から着いていけなくなります。

キャラクターの技やパワーアップしている様子が良くわからないんです。作者の中では完結しているんでしょうけど、たとえば上に張った「鬼纏(まとい)」とか、読んでいる限りはポカーンという感じでした。

ストーリーにおいも、突然、特定のキャラクターの過去話が始まったり、父親の話が出てきてきたりと、時空を飛んで読者を置いてけぼりにしていくような場面がちらほらと出てきてしまいます。

残念な形に

それでも評価する方も多かったのでしょう。単行本は累計1100万部を超え、アニメ化もされました。

でも、最後はジャンプ本誌から別の雑誌へ移籍し、打ち切りの形で連載終了。最終決戦もなんだか中途半端でよくわからないうちに勝利して終わっていました。全体に主人公のキャラクターばかり目立っていて、周辺キャラクターの影が薄いのも残念。

後一歩あれば、名作になったと思うのですが、正直、消化不良な漫画です。

コミックスも一ケタ台の頃は面白かったんですけどねぇ...


  • お勧め度: ☆☆(流行ってますし、一度は読んでみましょう)
  • 対象年齢: 10歳以上(子どものほうが楽しめるけど、残酷描写が気になる)
  • 初発表年: 1994年
テラフォーマーズ

ストーリー

火星の地表をある「コケ」と「ゴキブリ」を撒くことで暖め、人が住めるようにするという「タラフォーミング計画」。
西暦2599年、その計画の総仕上げとして、地表に残っていると思われるゴキブリの駆除をするために、15人の若者が火星へ旅立った。

小町小吉、秋田奈々緒をはじめとした貧しき若者たちは、この計画の参加報酬に、未来への希望をたくす。
だが、その希望は、火星到着後、すぐに断ち切られる。

彼らが駆除しようとしたゴキブリは、想定外の進化を遂げた「テラフォーマー」となり、人間たちを逆に駆除し始めたのだ・・・!こうして、宇宙船バグズ2号と、その20年後の宇宙船アネックス1号の、二世代にわたるゴキブリとの大戦争がはじまった!!

面白いです

「テラフォーマーズ」はこの記事を書いている時点で、累計1600万部も売れているそうです。アニメ化や実写映画化(映画は散々の評判のようですが)もされている人気作品です。

大きくなったゴキブリと戦うという発想が面白いですし、単純なドンパチだけでなく政治要素も絡んできたり、読めば流行っているだけの理由がわかります。でも、一番の見所はバグズ手術なる改造人間化でしょうか。

人為変態

俺の考える最強の...

多くの男児が空想の中で、「俺の考える最強の生物」を考えるのではないでしょうか。...と、少なくとも僕は考えました。映画ドラえもん のび太の日本誕生で、ワニとシカとコウモリからドラコを作る姿にわくわくしたものです。

「テラフォーマーズ」では、様々な生き物との改造人間や改造ゴキブリが沢山出てきます。物語が進んでいくと、一種類だけでなく複数の生物を組み合わせるケースも出てきて、まさに、「俺の考える最強の生物」が争っているのです。もう、これだけで、男児にはたまらないのではないでしょうか。

残酷描写も

「テラフォーマーズ」では、巨大ゴキブリも含めた「俺の考える最強の生物」が蟲毒のように争います。特に序盤は容赦なく人が死んでいきます。その死に方もかなり残酷なものが多く、アニメ版では放送規制に引っかかるのか黒塗りにされるシーンが多数ありました。

そういう意味で、あまり小さい子には見せたくない漫画かもしれません。

種

ゴキブリって

それにしても、ゴキブリって何でこんなに嫌われるんでしょう。ほかの虫は平気でもゴキブリだけはだめという人も多い気がします。僕自身はぜんぜん平気で、手で叩き潰しているんですが、家でも職場でも、ゴキブリを見かけたときの周囲の慌てぶりがなんとも不思議です。

人間のほうが何倍も大きな体をしていて力もあり、ゴキブリの立場になったらとてもかないそうにないと思うんですが。「テラフォーマーズ」はそんなひ弱なゴキブリが人間に逆襲する漫画でもあるかもしれません。


  • お勧め度: ☆(大人には面白いけど)
  • 対象年齢: 15歳以上(子どもには面白くないらしい)
  • 初発表年: 2007年
アオイホノオ

物語

舞台は1980年代の初め、大阪の大作家(おおさっか)芸術大学。主人公、焔燃(ホノオモユル)は漫画家を目指していた。「自分の実力ならいつでもプロデビューできる」と自信過剰な性格をしていたが、豊かな才能に恵まれた同校の学生達や、あだち充、高橋留美子といった若手漫画家の台頭を目の当たりにして自信を揺るがされる。それでも焔はプロの漫画家になるため歩み始めるのだった。

自伝的作品

「アオイホノオ」は1980年代にプロの作家を目指していた作者自身の自伝的な作品です。「この物語はフィクションである!」って書いてありますけど、漫画家やアニメクリエイターが実名でたくさん出てくるので、フィクションは入っているけれど、当時の時代感を反映しているものなのでしょう。

漫画やアニメの作家のことを意識することはあまりなかったのですが、当然のことながら、漫画やアニメの裏には生きた人間がそれを作っているんですよね。

青春です!

「アオイホノオ」の主人公、焔燃(ホノオモユル)は作者の島本さん自身を投影したものなのでしょう。秘められていて、まだ表には出てきていないけれども、自分の持つ才能への自信にあふれています。

その自信の裏返しとして、才能にあふれて成果を出しつつある大学の同級生や同世代の漫画家へ嫉妬したり褒めてみたり。でも、自分自身はなかなか漫画を描けなかったり。

漫画ではないものの、自分自身の若くて根拠のない自信にあふれているくせに打たれ弱い頃を思い出して、恥ずかしいような気すらしますが...きっと、これが青春です!

子ども受けはイマイチ

当時の社会背景とか、漫画やアニメがますます盛んになっていく時代背景がわかる上、若者らしい自信過剰さと成功への道のりが見えるので個人的には「アオイホノオ」は大好きです。

2014年にはテレビドラマ化もされましたが、ドラマの出来もよかったです。漫画が実写化されるとがっかりする作品も多い中、「アオイホノオ」は良かった。原作はその後もまだまだ続いているので、ドラマも続編作ってくれないかなぁ。

でも、時代が古いからなのか、漫画家の世界に興味がないからなのか、熱い青春に興味がないからなのか、残念ながらうちの子どもへのウケはいまいちでした。まぁ、青春期を経験してみないと、この漫画の面白さはわからないかなぁ。


(2017年1月25日まで、Kindleで期間限定無料やってます)

  • お勧め度: ☆☆(何か物足りない)
  • 対象年齢: 10歳以上(歴史に興味を持つきっかけには)
  • 初発表年: 2009年
信長協奏曲

あらすじ

ごくごく普通の今どき高校生サブロー。そんなサブローがひょんなことから飛ばされたのは、なんと戦国時代! そう、彼はタイムスリップしてしまったのである。自分の人生に日本の歴史なんてこれっぽっちも関係ないと思っていたサブロー。そんな彼がこの時代で出会ったのは、あの織田信長であった。歴史上とは似ても似つかないほど病弱な信長に、更に驚くべき頼み事をされる。それは、信長とサブローが入れ替わることであった…乱世で生きることとなってしまった平成育ち信長の、奔放奮闘記!!

実は大物?

「信長協奏曲」はよくあるタイムスリップ漫画で、タイムスリップした高校生がよく似た顔の織田信長と入れ替わります。ただ、この主人公、なかなか不思議な主人公です。全く知らない世界へ放り込まれ、刀を突きつけられたり身代わりしろという無理難題を振られたりするにもかかわらず、焦りがないというかやる気がないというか、平然としています。

身代わり後、信長として生きていく道も、周囲のお膳立てと運だけで世渡りしているようにも見えるのですが、結果として史実をなぞっていきます。専属の荒くれ物立ちを従えつつの、この泰然自若とした感じは実は相当な大物かもしれません。

ちょっと無理が

現役高校生として、高校入試を経験しているはずなのに、本能寺で明智光秀に討たれたことすら知らないのはどうかと...。英国数の三教科受験の私立高校生なんでしょうか。

周囲の人も、いくら顔が似ているからと入れ替わったことに違和感を感じないのはどうしたものかと...。まぁ、そういう娯楽漫画といえばそれまでなんですが、真剣に読もうとすると設定に無理があるところがちらほらと気になってきます。

偽信長

ドラマや映画にも

そんなこんなで、個人的には購入しなくてもよかったかなぁ。。。と思ってしまう漫画なのですが、ドラマ化や映画化もされているので、世の中的にはそこそこ受け入れられているようです。

歴史ものだと期待して読まずに、娯楽漫画だと割り切って読めば、荒唐無稽な設定も楽しめるでしょう。ただ、予備知識がない子どもが最初にこの本で戦国時代に触れてしまうと、誤った知識を植えつけそうで心配です。

信長は人気

それにしても、織田信長って人気者ですよね。信長のシェフ最後のレストラン、戦国自衛隊といったタイムスリップものではもはや定番です。死後も、ドリフターズやノブナガンとして活躍しています。

漫画の世界で信長がどう扱われているのか、調べてみると面白いかもしれませんね。


ちなみに、2017年1月26日までKindoleで3巻までを期間限定で無料購読できますよ。


  • お勧め度: ☆☆☆(柔道漫画の最高傑作)
  • 対象年齢: 10歳以上(柔道やる子ならもっと小さくても)
  • 初発表年: 1985年
柔道部物語

あらすじ

岬商業高校に進学した三五十五(さんごじゅうご)は、ふとした興味から柔道部を見学(仮入部)したところ、新入部員歓迎のしごき「セッキョー」で地獄を見る。これに憤りを感じるが、負けん気の強い三五は柔道を続けることを決意する。そして三五は必殺の背負い投げを会得し、岬商の救世主となる。

メダリストも愛読

柔道部物語は吉田秀彦、古賀稔彦、野村忠宏といったオリンピックのメダリストも愛読していた柔道漫画です。柔道経験者でもある作者が、楽しみながら書いていた様子が伝わってきます。

体育会系部活のあるあるネタコメディ路線として始まった漫画ですが、やがて主人公の三五十五が日本一を目指していく本格柔道漫画へと変わっていきます。そして、その背景にはオリンピックメダリストの古賀稔彦からのファンレターが関係していたとか。

柔道

柔道未経験者でも面白い

柔道を経験した人が柔道の漫画を読んで面白いのは当たり前なのですが、柔道部物語は柔道未経験者でも楽しめる魅力がたくさんです。

主人公をはじめ、魅力的で個性的なキャラクター。挫折と成長というスポーツ漫画のセオリーともいえるストーリー。テンポのよい展開に、ところどころ差し込まれるギャグ。迫力の柔道シーン。

実際、当時はこの漫画が柔道ブームを引き起こしましたし、子どもが柔道に興味を持ってもらうためにも使える漫画かもしれません。ただ、うちの子は漫画としては楽しんだものの「汗臭いんでしょー。それに、痛そうだし、ヤダ」と負の面が伝わってしまったようですが。

昔の体育会運動部

物語の序盤、仮入部ではやさしかった先輩が、仮入部期間が終了するといきなりしごきに入ります。僕が入っていたのは違う部活でしたが、おんなじ様なことがありました。まぁ、伝統と称して僕も後輩達に同じ子としていたんですが。

ちなみに、長男の通う中学校ではそんなことありえないとのこと。そんなことしたら、みんな部活やめるそう。25年も前の漫画ですし、時代は変わりました。今も、岬高校では「セッキョー」やっているんですかねぇ。


時代は変わりましたが

そうそう、時代は変わりましたが、同じ作者が女子柔道に舞台を移して2016年から柔道漫画を連載中です。女子柔道金メダリストの恵本裕子さんが原作だとか。こちらも要チェックです!


  • お勧め度: ☆☆☆(名作です)
  • 対象年齢: 10歳以上(夢をはっきりと意識した子に)
  • 初発表年: 2001年
ふたつのスピカ

あらすじ

2010年、日本初の有人宇宙探査ロケット「獅子号」が打ち上げられた。しかし、上昇中に補助ブースターが爆発、飛行停止システムも作動せず、獅子号は鴨川アスミの住む唯ヶ浜市街地に墜落する。搭乗員は全員死亡、民間人にも多数の死傷者を出す大惨事を引き起こした。これにより、日本の宇宙開発は大きく遅れる事になった。
数年後、この事故で寝たきりとなっていた母親を亡くしたアスミの前に、獅子号の搭乗員だった高野の幽霊であるライオンさんが現れる。ライオンの被り物をした彼の姿は、不思議な事にアスミにしか見えなかった。彼は独りぼっちだったアスミに、自らが果たせなかった宇宙への夢を語った。その話を聞いてライオンさんと「ある約束」をしたアスミは、大きくなったらロケットの運転手になる、と心に誓う。
ある夜ライオンさんは、アスミにおとめ座のα星・スピカの話をした。スピカが連星であること、ふたつのスピカが支えあって一つの輝きを生んでいること、どちらかひとつが消えてなくなるまで…。ずっと一緒にいて欲しい、と言うアスミに、ライオンさんは、そこに星がある限り一緒にいる、と答えるのだった。
中学卒業後、新設されたばかりの宇宙飛行士養成高等専門学校、「東京宇宙学校」に進学したアスミは、そこで同じ夢を持つかけがえのない仲間に出会う。様々な困難を乗り越えながら、アスミは仲間と共に宇宙を目指して進んで行く。

宇宙を目指す子ども達

宇宙をテーマにした漫画って名作が多い気がしますが、「ふたつのスピカ」もそんな名作のひとつです。特に主人公のアスミは、明日を夢見るという名前のとおり、真っ直ぐに夢を追い求め、夢に向かって努力しています。

そんなアスミに惹かれて、そんなアスミの影響を受けて宇宙飛行士への道を目指す5人の少年少女の物語です。5人それぞれ、背景も目的も違うけれど、こうやって同じ方向を目指して努力をして、お互いに支えあって成長していきます。

こういう親友がいるって、いいですよね。うちの子にもこんな仲間ができればいいなぁ。

わたしの夢

泣けます

「ふたつのスピカ」には沢山の出会いや別れ、仲直りがあります。そして、自分の失ってしまったものを思い起こさせるちょっぴり切ないストーリーもちりばめられています。

ネタばれになるので詳しいことはかけませんが、子どもの視点で読んだときと大人の視点で読んだとき、それぞれに泣けるポイントがちりばめられています。子どもに向ける親の思い、友情のありがたさ、永遠の別れや親と子の和解等々。泣ける漫画が必ずしもいい漫画だとは言いませんが、情感たっぷりで、なんか心の奥底をくすぐってくる漫画なんです。

読み終わってからも、友達と二度と会えなくなるような寂寥感というか。まだ続きが読みたかったと思わせてくれます。

ふたつのスピカ

作品の中でも紹介されていますが、スピカは連星です。作品タイトルは「ふたつのスピカ」なので、望遠鏡で目視できる二つの星をアスミとライオンさんのふたりになぞらえているのかも知れません。

でも、実はスピカは5連星だといわれています。5連星だとしても、5人の少年少女をあらわしているようで良いなぁ...。

眩しすぎます

なんというかおじさんには眩しいです

物語の中でも、周囲をうろつくおじさんが「ああいう若者たちの姿っていうのは、私なんかにも眩しすぎます」という台詞が出てきますが、ホント眩しいです。うちの長男も宇宙飛行士になりたいといっていたけど、ここに出てくる子達ほど努力していないなぁ...。僕自身もそうだったけど。親を見習わず、漫画の主人公達をまねてほしいです。

でも、「ふたつのスピカ」の中では、主人公たち少年少女だけでなく、アスミの父親の鴨川友朗や宇宙学校の共感の佐野先生も夢を追い続けています。僕ももっと頑張らないとですが。


そんなこんなの、「ふたつのスピカ」。NHKでアニメ化はされていたものの、マイナー雑誌に連載されていたこともあり、漫画やアニメへの興味が薄い方にはご存じない方も多いかもしれません。でも、未読の方には大人と子どもに関係なく、ぜひ勧めたい漫画です。

  • お勧め度: ☆☆☆(続きが気になる!)
  • 対象年齢: 10歳以上(大人も楽しめる少年漫画)
  • 初発表年: 2013年
BIRDMEN

ストーリー

 中学生の烏丸英司は、鴨田、鷺沢、つばめと共にバス事故に巻き込まれて以来、身体から翼が生える“鳥男”となる。鳥男の先輩・鷹山の指導の下、5人は鳥部を結成。鳥部は生物学者の龍目を仲間に加え、次第にさまざまな能力に目覚める“鳥男”の謎の解明に挑みつつ、特殊な能力を使って活動を広げる。
 やがて烏丸たち鳥部に、鳥男(セラフ)を研究する組織EDENが接触を図ってきた。一方、アメリカの鳥男・アーサーは謎の人物・スカイに導かれて施設から脱走。施設に囲われている仲間のセラフたちを次々に解放していくが、一団はEDEN本部の企てにより襲撃されてしまう。瀕死のアーサーと遭遇した鷹山はその後突如失踪。アーサー亡き後、世界唯一の先導者(べルウェザー)となった烏丸は、仲間と力を合わせて失踪した鷹山を呼び戻そうとする。
 EDENで製作されたADAMⅡ型クローンのフォックスは、EDENを出て烏丸たちに接触し、自らとEDENの秘密を次々と暴露する。その目的は、セラフを使って人類を滅ぼそうとするEDENの目論見を阻止し、セラフたちを護ることだという。烏丸はセラフたちが排除されない世界を目指す覚悟を決め、フォックスたちもみな新しい世界に連れて行くと約束し、契約を結ぶ。だがその裏で、EDENからEVEⅢ型クローンの3人が脱出し、世界各国で不穏な動きを見せ始める…。
 単調な中学生活から一変、予期せぬ出来事と秘密がいっぱいのSF×青春ジュブナイル!!

出だしは暗いです

「BIRDMEN」は、コンプレックスむき出しの中学生烏丸英司が主人公の物語です。実質的な母子家庭で母親とうまく行かず、中学受験をやめて公立高校へと進んだ主人公。頭は良いものの、運動能力や容姿に強いコンプレックスがあり、コンプレックスの裏返しで周囲を見下す傾向もあって、周囲とうまくいきません。少年期を過ぎた大人の目から見ると、リア充への憧れや、女子への憧れなど中学生らしい少年なのですで、本人にとっては切実な問題で僕にも見に覚えがあります。

「BIRDMEN」の物語はこの少年の苛立ちや心の声から始まります。うちの長男は、烏丸英司とは少し違いますが、中学受験失敗組なので、この物語の出だしが読むに耐えなかったそうです。目をそらしたい自分が底にいたのかもしれません。

少年漫画って明るい主人公、むしろ能天気とすらいえる主人公が多いのに、内向的な主人公でどうなるかと思いましたが...この主人公の成長が徐々に変わっていきます。

少年から人外へ

一般的にこういったジュブナイルストーリーは少年が大人へと成長していく話が多いのですが、「BIRDMEN」でも少年少女が成長していきます。ただし、大人...ではなく、人間を超えた存在へと。

成長のきっかけは自動車事故で命を落としかけたことでした。そこでであった鷹山の血を飲むことで、鳥男と呼ばれる羽の生えた人間へと変わります。そして、鳥男としての能力を開花させ、覚醒していく中で、今までの自分とは違う視点をも身に着けていくのです。普通の子が、子どもの視点から少年の視点、青年の視点、そして大人の視点へと違う視点を持つように。

そして内向的だった少年が、精神的にも物理的にも羽ばたいていきます。

中学校から世界へ

物語は、鳥男としての人間にはない能力や視点を身につけていきながら地理的にも展開していきます。この作者のデビュー作は限られた地域で展開する話でしたが、「BIRDMEN」では中学校から世界へと。

といっても、連載中の作品でもあり、世界へは飛び出したばかりですので今度、どう展開していくのかはわかりません。

コミックスで読みたい本

上のほうに書いたように、「BIRDMEN」の話の展開はとてもゆっくりです(よく言えば丁寧)。週刊誌で月一回連載されているのですが、丁寧に物語が進んでいくので、正直、週刊誌向きの話ではない気がします。

コミックスも1巻、2巻だけだと正直あまり面白くありません。これから手に取る方には、物語の世界がわかってきて、さらに広がっていく5巻くらいまで読んでから判断してほしい漫画です。話が進むごとに面白さが増していきます。

続きの気になる漫画

そして、面白くなってくるのですが...話が丁寧な上に、月一連載のためになかなか続きが読めません。早く続きが読みたいです!(って、最新の9巻が来週発売だ!)



  • お勧め度: ☆☆(後半盛り上がります)
  • 対象年齢: 6歳以上(子どもでも安心)
  • 初発表年: 2003年
結界師

あらすじ

400年続く妖(あやかし)退治の専門家、結界師一族の家に正統継承者として生まれた墨村良守(すみむらよしもり)。隣に住む雪村時音(ゆきむらときね)も良守と同じ結界師だが、両家は犬猿の仲。良守と時音が守っているのは妖を呼び寄せ、その力を高めてしまう烏森(からすもり)の地。2人は夜になると結界術を使い、烏森の地に建つ私立烏森学園に集まってくる妖を退治している。良守はかつて自らの失策により、時音が妖の攻撃から自分をかばい大怪我を負ってしまったことを後悔し、二度と時音や自分の周りの人々が傷つかないようにするため、強くなることを心に誓うのであった。
やがて良守と時音は、妖犬の斑尾の旧友・鋼夜(こうや)との戦い、夜行に所属する少年・志々尾 限(ししお げん)との出会いと妖の組織・黒芒楼(こくぼうろう)との対決、良守の兄・墨村正守との葛藤、人の心を喰らう魔物・邪煉(じゃれん)に対して封魔師・金剛毅(こんごう たけし)と共闘、戦闘用の妖・黒兜(くろかぶと)との死闘、など様々な出来事を通して成長していく。そんな中、烏森に現れた巫女・サキによってある予言がもたらされる。「恐れよ…血の臭い纏いし災いの神…この地に舞い降りん」。
今、裏会を中心に何かがおきようとしていた。

妖怪好きに

子どもというのは怪獣とか妖怪とかが大好きなものです。うちの子ども達も妖怪ウォッチから始まり、地獄先生ぬーべーへ。果ては妖怪漫画の元祖とも言えるゲゲゲの鬼太郎と、さまざまな妖怪漫画を読んできました。

「結界師」は妖怪と戦うことができる結界術を持つ能力者が主人公です。

出歩かない少年漫画

一般に少年漫画は、友を求めて宝を求めて世界を救うために、といろいろな理由で旅をして回ることが多いのですが、「結界師」は烏森という地を守ることが大前提なので出歩きません。

こちらからであるかなくても、烏森へ妖やら敵組織やらが勝手にやってきてくれます。定番を破っているという意味では、なかなかチャレンジングな漫画だといえるでしょう。

ただ、このチャレンジの弊害なのか、序盤はあまり物語りに動きがありません。主人公の墨村良守とヒロインの雪村時音が烏森にとどまり続けているので話の展開が難しそうです。中盤以降、主人公の兄や母が主人公の変わりに出歩いてくれることで物語が大きく動き出します。

少年漫画で旅するのはワンパターンだなぁ。。。など思っていたのですが、定番にははやりそれなりの意味があって、物理的に場所を移動しないとなかなか物語を進めにくい面があるかもしれません。

ちなみに、主人公立ちの守る烏森という場所。東京の新橋駅とはまったく関係ありません(わかる人にはわかるはず)

方位・定礎・結

いろいろな能力が面白い

結界師の世界には、妖怪と戦ったり人間同士が戦うためにさまざまな能力が出てきます。封魔術や風使い、式紙といったこういった和風テイストのファンタジーバトルに欠かせない能力も出てきますが、主人公達が使う結界術なんてのはこの漫画オリジナルじゃないでしょうか。

能力によって特徴があり、その使い方もさまざまなあたり、子ども心をくすぐると思います。

主人公のまっすぐさが良い

大人の視点から見ると、主人公墨村良守のまっすぐさを応援したくなります。考えずに行動して窮地に陥ったり、考えずに発言して周囲を傷つけたりする面があるのですが、それがマイナス面に感じないほど真っ直ぐで純粋な感じで、ひねくれたうちの子にも見習ってほしいところ。

最終回では主人公墨村良守が大きな決断をすることになりますが、物語の後の世界でも笑って暮らしていてほしいなぁ。

ヒロインの雪村時音に恋愛に近い感情を持ちつつも、相手には弟のようにしか思われていない辺りも応援したくなります。この二人の間柄、本編では…(本筋ではないものの、ネタバレなので自粛)

アニメ化もされました

結界師はアニメ化もされています。我が家がこの漫画を知ったのは、アニマックスでやっていた再放送でした。たまたま見た次男が、和風な能力バトルを気に入ってそこからコミックスを買うにいたったのですが、アニメよりもコミックスのほうが面白い気がします。

あまり話題にもならない気がしますが、アニメ化もされていますし安定した面白さで、最後まで物語が破綻しない名作ですよ。


  • お勧め度: ☆(可もなく不可もなく)
  • 対象年齢: 10歳以上(歴史に興味を持ってくれるかな)
  • 初発表年: 2011年
最後のレストラン

あらすじ

園場凌は父の後を継いでレストラン「ヘブンズドア」オーナー兼シェフとなったが、レストランには何故か死の間際の歴史上の著名人がやってくる。彼らの無理難題のような注文を受け、園場は従業員の有賀千恵や前田あたり、過去に帰れず従業員として居付いたジャンヌ・ダルクと共に機転を利かせて、彼らの最期の料理として満足のいく一皿を作っていく。

タイムトラベルもの

漫画のネタとしても結構ありがちなタイムトラベルとグルメを組み合わせたのが「最後のレストラン」です。死を目前にした偉人達が食事を注文し、それに答えていきます。

偉人や食事に関する薀蓄も多いので、歴史に興味を持つきっかけとしても、食に興味を持つきっかけとしてもよい本ではないでしょうか。

出てきたレシピを自作したことはないのですが、漫画グルメの再現レシピとしては外れがなくおいしいようです。

ドラマ化もされました

「最後のレストラン」はNHKでドラマ化もされていました。我が家がこの漫画に興味を持ったきっかけもドラマだったのですが、ドラマと漫画は全く別物でした。

ドラマでは男性従業員をはじめとし原作にないキャラクターがやたらと多いし、ストーリーも原作にはないヒューマンドラマ化しているし、日本人俳優が西洋人の役をするのには無理があるし...。山村紅葉さんの楊貴妃だけは見ごたえありましたが。

どちらが好きかといわれれば、漫画のほうが面白かったかなぁ...。ドラマやストーリーに軸足を置いたテレビドラマと食や薀蓄に軸足を漫画との違いがあるので、好みの問題だとは思いますが。

信長

読みやすいです

織田信長やヒトラー、ガンジー、サルバトール・ダリなど様々な人物が訪れる「最後のレストラン」。ジャンヌ・ダルクや安徳天皇など、物語が進む中でレギュラー陣も充実していきます。

とはいっても、基本的には一話完結。ちょこちょこと話をまたいだ小話が入ることもありますが、どの巻から読んでも大筋に影響はありません。続きを気にすることなく、一話で読み終えることが出来るので移動途中や睡眠前などにも気軽に読める漫画です。

前田さんすごい!

いろんな国やいろんな時代から人がやってくるので、言葉や時代背景も様々なのですが、そんな時代の差を埋めてしまうのがスーパー大学生の前田あたりさん。

日本国内ですら、数百年前の人とは会話が出来ないだろうに(現代だって、本気の鹿児島弁や津軽弁は大半の日本人に理解できません)、あらゆる言語を使いこなし、その人物の薀蓄や歴史的・文化的背景まで解説してくれるスーパーウーマンです。

前田あたりという名前自体、「あたりまえだ」を逆にしただけなので、当たり前にいろいろ出来るのでしょう。漫画ならではのスーパーキャラクターですが、最新の9巻を読む限り、今後、前田さんの超能力の源泉が明らかにされることがあるのかもしれません。

ただ...

なんというか、全体に「可もなし不可もない」という読後感なんです。一話完結型だから仕方ないのかもしれませんが、「続きが読みたいー」と思うようなことがなく、「気になるからもう一回読み返そう」ということもなく。一回読んで、満足という印象。

うちの次男が夏休みの宿題だった偉人の紹介(本来は、伝記を読んで書くらしい)にこの漫画を便利に使っていたようですが、便利だし、為にはなるのですが、もう一歩何かが足りない気がします。(ということで、おススメ度は「時間とお金に余裕がある方」向けとさせていただきました。


  • お勧め度: ☆☆☆(学習漫画としても)
  • 対象年齢: 15歳以上(薀蓄を学ぶにも基礎知識が必要)
  • 初発表年: 1994年
もやしもん

作品紹介

菌が見える特殊能力を持つ、もやし(種麹)屋の次男坊、沢木惣右衛門直保。彼は東京の某農大に入学する。農大を舞台に、沢木と研究室その他の仲間達、そして菌が活躍したりしなかったりのキャンパスライフ。大学生活のモラトリアム感と、菌が満載の「もやしもん」。あなたもぜひ、かもされてみてください。

菌が見える?

菌が見えるという特殊能力を持つ沢木惣右衛門直保が主人公の漫画です。まぁ、漫画ならではの設定ですよね。

菌というと、汚いものや嫌なものという印象を持つ人が多いかもしれませんが、「もやしもん」の世界でデフォルメされた菌達はなんともかわいらしく、菌のフィギュアが発売されるほど人気になってました。アニメ化や実写ドラマ化もされた人気作です。

でも、この菌が見えるという設定...あんまり本筋と関係ないのが...。全体を通じて、主人公以外の人のキャラクターのほうが目立っている漫画です。

学園物?薀蓄物?

ただ、この漫画。その見方によって評価が変わってくる漫画かもしれません。農大生がキャンパスライフを送っていくという学園物としてみてしまうと、薀蓄部分がうるさすぎて、読みづらいかもしれません。

樹先生を中心とした薀蓄物として読んだほうが楽しめる気がします。農業とか食に興味のある人にはたまらないない漫画なんじゃないでしょうか。

でも、終盤は結構学園物っぽくなってきますが。

沢木惣右衛門直保

樹先生の薀蓄が楽しい

個人的には、この漫画の一番の見所は、小泉武夫教授をモデルにしたとも言われる樹教授です。大学の片隅でキビヤックを作り出し、学内の古い校舎で酒を作り出し、何かというと薀蓄を語りだし、漫画とは思えないほどそのページを文字だらけにしてくれます。

漫画としてのストーリーだけを追いたければ、樹先生の薀蓄は全部すっ飛ばしてもかまわいません。物語の本筋にはほとんど絡んでこないので。キビヤックをはじめとする世界中の珍味や酒造りなど、発酵を中心とした語りが本当に凄い。でも、この薀蓄こそが「もやしもん」の魅力だと思います。

子どもには厳しいかも

ただ、薀蓄部分は結構細かいので、少なくとも小学生の子どもには受け付けられませんでした。中学生の長男も、飛ばし読みしている感じかなぁ...お酒造りの話なんかもあるので、酒が飲めるようになってから、成人してから読んだほうが楽しめる本かもしれません。

似たような系統の話である玄米先生の弁当箱をまず読ませてみて、興味を持つ子には、よりディープな「もやしもん」を読ませるのがよいかも。


  • お勧め度: ☆☆(一度はどうぞ)
  • 対象年齢: 6歳以上(王道です)
  • 初発表年: 1994年
七つの大罪

あらすじ

人間と人間ならざる種族の世界が分かたれていなかった古の時代、ブリタニアの大地を舞台に、七人の大罪人から組織された伝説の騎士団〈七つの大罪〉の戦いを描く。
リオネス王国奪還篇
ブリタニア随一の大国・リオネス王国は、聖騎士達による『聖戦』のための軍備強化、更に増長した彼らの横暴によって荒れに荒れていた。十年前に聖騎士長殺しの濡れ衣を着せられた伝説の騎士〈憤怒の罪〉のメリオダスは、身分を隠して移動酒場を営んでいた折、自らに救国の助命を乞う第三王女エリザベスと出会う。片や冤罪の真実を知るため、片や母国を救うため、喋る豚ホークをともない、散り散りになったメリオダスの同胞である伝説の騎士団〈七つの大罪〉の行方を探し求める。旅の末、やがて〈嫉妬の罪〉ディアンヌ、〈強欲の罪〉バン、〈怠惰の罪〉キング、〈色欲の罪〉ゴウセル、〈暴食の罪〉マーリンが二人と一匹の元に集まった。六人まで結集した〈七つの大罪〉は、十年ぶりに戻った王都において、濡れ衣を着せた真犯人である、魔神族復活を目論む聖騎士長ヘンドリクセンと決戦。すべての名誉を回復した六人は、エリザベスとともに英雄としてリオネスに帰還する。
十戒篇
ヘンドリクセンを影で操っていた魔神フラウドリンの目論見によって、三千年前に封印された魔神族の精鋭〈十戒〉が復活し、瞬く間にブリタニアを侵略。しかし、最後の仲間である〈傲慢の罪〉エスカノールと合流した〈七つの大罪〉をはじめ、キャメロット王国の若き王アーサー・ペンドラゴン、そしてブリタニアの住人たちは叛逆の炎を絶やさず、圧倒的な力を持つ魔神族からブリタニアを取り返すために戦いを挑む。

気軽に読める漫画

「七つの大罪」の良いところは難しいことを考えずに気軽に読める漫画だというところでしょうか。それに、こういったファンタジーの世界は子どもが大好きな世界じゃないでしょうか。

近頃はやたらとメッセージ性が強かったり、心理バトルというか駆け引きが多くてついて行くのに頭を使ったり、登場人物がやたらと重いものを背負っていたり、なかなかストーリーが進まなかったり...と気軽に読めない漫画が多いのですが、エンターテイメントとして、娯楽作品として気軽に読める漫画です。

メリオダス

王道といえば王道

お姫様がたまたま助けを求めに駆け込んだ料理屋が探している人が経営する酒場だったり、誰にも抜けなかった剣を抜いてみたり、主人公が仲間探しをする物語だったり、死者に会いに行ったり、武道会で仲間同士が戦ったり、修行というか試練を経て隠された力が開花したり...「七つの大罪」ではどこかで見たようなことがあるようなベタベタな展開がどんどん出てきます。

でもって、剣と魔法でどんぱちしていくという、おじさんには恥ずかしくなるほどのベタな要素がてんこ盛りです。でも、はじめてみる子どもたちには新鮮な様子。変にひねくれた作品も多い時代ですが、王道のファンタジーの入門としてもいいのではないでしょうか。

セクハラが気になる

ただ、気になるのがセクハラ描写。鬼太郎ヘアのナイスバディなヒロインがいるのですが、ヒロインへのセクハラがひどい。お尻もんだり胸もんだり。

「俺がやりたいー」じゃなくて、このセクハラの多さは子どもに見せるのがためらわれるほど。そんなセクハラ大好きな子どもに育ったら困るし...セクハラ描写がなくても十分面白いと思うので、是非、何とかしてほしいところ。

インフレも気になる

メリオダスをはじめとし、主人公チームは最初からレベル90くらいの圧倒的な強さを誇っています。弱い主人公が徐々に強くなっていく物語が多い中、序盤は強さゆえの爽快感があります。

ただ、強すぎると話の展開が難しいのか、今度はもっと強い敵が出てきます。その強い敵も、超神水じゃなくてドルイドの修行を経ることで、また圧倒してしまうので...このままだとトリコ並にインフレしていくのではないかと少々心配。

でも、まぁ、よく似た物語のドラゴンボールはそのまま宇宙規模の戦いへインフレしていったので、おなじ道をたどるのかなぁ。


  • お勧め度: ☆☆☆(音楽やる人には是非!)
  • 対象年齢: 10歳以上(熱い!)
  • 初発表年: 2013年
sax

ストーリー

主人公はバスケ部に所属する宮本 大。
中学の時、友人に連れられて見に行ったジャズの生演奏に心打たれた。
その後、たった独りでただがむしゃらにテナーサックスの練習をはじめる。

ダンクシュートを打つ身長も、ジャンプ力もない。
身体には限界がある。
でも音にはきっと………

楽譜は読めず、スタンダードナンバーも知らない。
ただひたすら真っ直ぐ突き進んでいく。

「絶対にオレは世界一のジャズプレイヤーに、なる」。
雨の日も猛暑の日も毎日毎日サックスを吹く。
初めてのステージで客に怒鳴られても。
それでも大はめちゃくちゃに、全力で吹く。

「僕好きだな、君の音」。
ものすごくめちゃくちゃな演奏。
でも、人を惹きつける力が大の音にはある。

激しく変わる。激しく成長する。
ジャズに魅せられた少年が世界一のジャズプレーヤーを志す物語。

ジャズが聞きたくなる

ジャズなんて、たまたま流れていたラジオで耳にしたくらいしかないおっさんですが、「BLUE GIANT」を読むとジャズを聴きたくなります。そして、楽器を演奏したくなります。音なんて気にしなくていい田舎の一軒家でスピーカーの音をでっかく鳴らしながら、自分も合わせて演奏。。。って良い老後かもしれないなぁ。

でも、サックスは簡単に吹けるものなんですかね?金管バンドとか吹奏楽部にはいっていた弟がいたので、弟の楽器を借りたことはありますが、トランペットは音を鳴らすことすらできませんでした。

絵なのに音が聞こえてくる

さて、漫画の話に戻ると、「BLUE GIANT」のすごさのひとつは絵です。前にも紹介したましろのおとと同じように、漫画にもかかわらず絵が聞こえてくるようです。

といっても、民謡と違ってジャズの曲はわからないので音の出る圧力を感じるだけ。知らない曲はyoutubeで探しながらになりますが。でも、この絵とか気持ちよさそうですよね。

sax

まっすぐな熱さ

「BLUE GIANT」は主人公の宮本大の熱さも凄い。スポコンもの漫画なんかにあるような熱さがあります。まっすぐにひたむきにジャズに取り組む宮本大の熱さが、周囲の人たちや熱さを忘れかけてライスワークになりつつある年長のジャズプレイヤーへと伝播していきます。

こういう真っ直ぐな熱さをなくしてしまったおじさんとしては、まぶしいようなうらやましいような。うちの子をはじめとし、クールといわれる今時の若者にこそ、こう熱くなれるものを一度は見つけてほしいものです。

リアルな音楽

あと「BLUE GIANT」で面白いのがお金にまつわるリアルな音楽事情を描いている点です。真っ直ぐな熱さと相反するようですが、現実は必ずしも楽ではありません。

寮に入っていた大学時代、バンド活動に明け暮れて大学中退してバンドマンを目指していった友達がいるんですが、食べていくのは相当大変だったようです。そこそこ才能があったのか、努力が半端でなかったのか、彼はスタジオミュージシャンなんかもしていましたが、30代後半で音楽の道をあきらめてしまいました。

ジャズマン目指す登場人物たち、バイトをしながらなけなしの出演料をもらってなんとか生計を立てています。才能あふれる人たちのようですが、それでも大変なんです。

父親として子どもの将来を気にする側になった今、夢は追いかけてほしいけれど、現実も見据えてほしいとも思います。「BLUE GIANT」の宮本大がこれからどうやって成功していくのかわかりませんが、下積みの厳しい生活をしっかり描いてくれているところがありがたいです。


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